5話 精霊界の方が(文明レベルが)都会な件について

 精霊召喚のページを開いて驚きが隠せなかった。

 何故ならそこには白紙のページしかなく、俺が知りたいと思った情報のみが徐々に書き込まれていったからである。


 例えば、こんな具合に……


 精霊召喚って何だ?


 −−ポゥ…


【精霊召喚】


 ◯ 四大元素(水、火、風、土)を司る精霊を召喚し契約または、配下にすることを指す。

 契約または、配下にした精霊はいつでも呼び出し可能。(魔力使用)


 ◯ 精霊には四大元素の他にも違う属性の精霊も居るので探してみよう。


 ※シークレット属性もあるぞ!!

 ※※ ただし、精霊召喚は魔法を使うより難しいので【火炎魔法(中)】が使える位の魔力が溜まったらトライしてみましょう。


【初心者から上級者までこれ一冊】P546楽しい精霊召喚より抜粋


 と、言う感じで出てくる。若干、広告臭い言い回しが気になる。


 …しかも、なんだこれ。シークレットがあるんかい。

 何だか前の世界にいたスマホゲーの課金ガチャみたいだ。

 正直、俺はこれに賭けている。魔法が使えるかの瀬戸際だからな。なので、シークレットとか悪ふざけはいらない。


 ……いや。嘘です。めっちゃ惹かれてます。出来ればレア出てほしい。レーア! レーア! レーア!


 ヤバいめっちゃ興奮してきた。

 いやいや、待て待て、こういう物は欲をかくと出ないんだ。

 無心だ。煩悩を捨て去り本能で感じることが必要だ。

 よし、そうと決まったらお祈りだ。


 一瞬で魔導書を三回撫でたらレアが出てくるとか無いかな……


 頼む。何でも良いから1つ。1つ属性のある精霊と契約させてください。何でもしますから。(懇願)


 満を持したので召喚を試してみる。魔導書に手を乗せて魔力を注入してみた。


 ままよ!!


 魔導書は強い光を放った。



 ・・・



「むぅ……」


 俺は、魔導書を目の前に少し困っていた。

 理由は、精霊召喚が……


 思いのほか、簡単にいったからだ。


「ガハハハハハハ」(火の精霊 名前:プロメテ)

 見た目は、筋骨隆々の赤い身体が目立つ。鬼の様な形相だが、脳筋っぽい。

 見た目がランプの精みたい…。


「ウフフフフフ」(水の精霊 名前:アクア)

 見た目は、髪をサイドでまとめたお姉さんタイプ。全体的に青い。

 足までしっかりあって歩行できると思う。(浮いてるけど…)


「エヘヘヘへへ」(風の精霊 名前:セティ)

 見た目は、糸目の幼女。緑が目立つ。

 背中に羽が生えていて、一番精霊っぽい。笛とか吹きそう。


「フォフォフォフォフォ」(土の精霊 名前:バッカス)

 見た目は、おじいちゃん。ドワーフに似ているが【ハイホーセブン○】の一匹に近い。

 黄色を特徴としている。モノクルを掛けている。腰が弱そう。


【レア】「ホホホホホ」(月の精霊 名前:カズハ)

 見た目は、完全に精霊。ファンタジーに良くある伝説とかになってそうな感じ。

 白がメインカラーでユリの花に包まれた精霊みたいなイメージ。


 物は試しと全属性(四大属性)を試したら。全属性+αが来てしまった。しかも、いきなりレア属性っぽいのも引いたらしい。書いてあるし……。

 ただ、これがシークレットかどうかは知らないが。


 特に契約の話をしてきたり、戦闘をけしかけて来る訳でもない。帰る素振りも見せないのに、皆、魔導書付近に集まり仲良く雑談している。


 貴婦人のお茶会を見ている様だった。


「あの...。そろそろ、うちのメイドが帰ってくるので、皆も元の所の帰っていただけませんか?」

「「「「「いやです(じゃ、だ、なの、でございます)」」」」」

「えぇ~。なんでぇ?」


 精霊が召喚できた事は俺にとってかなりプラスだ。一応は使える魔力って事だからな。


 だが、大事な事を失念していた。それは、精霊が俺と契約するのは、また別の話だと言うこと。

 言われて見ればそうだ。

 急に呼ばれて『仲間になれ。』なんて言われたら普通だったらやばい人だと思ってしまう。


 精霊の皆は慣れているのか、その気が無さそうだった。何というか『ただ居る』って感じだ。


 こう言うときの対処法は魔導書のQ&Aを使って確認しよう。こいつは思った事を表示してくれる神設定付きなのできっと答えをくれるだろう。


 俺は、読める範囲で魔導書を読み返してみたが、いくら読んでも、


「まず最初に契約の手続きを済ませよう」


 しか書いてねええええええええ!!


 その後、10P位同じことが書いてあったけど、このページこんなにいる?


 ※精霊は逃げ足が早いので、絶対に逃さないように!!


 とも書いてあった、のだが…。どないせいちゅーねん。


 この魔導書の持つデータベースが壊れているのでは? と、疑ってしまう。


 しかし、ここに居る連中は逃げるどころか俺の目の前で無防備に寛いでいる。


「あのさ。契約する気が無いなら帰ってくれない?」


 ちょっと不機嫌気味に言ってみる。俺だって次のアポとかあんのよ。

 ただでさえ魔法が使えなくて荒んでいるって言うのにさ、新しい精霊を呼んで契約しないと…


 だが、返された返事は予想とは違う答えだった。


「「「「「既に契約致しましたよ?(のじゃ、のだ、の、のでございます)」」」」」

「え?」


 精霊の皆はくつろぎながら口を揃えて答えてくれた。


「主殿。わしらは主に呼ばれた瞬間に契約をしておったのよ」

「と言うか待ってた? が正しいでしょうか?」

「僕が一番最初に待ってたの」

「がはは。ワシは近くを浮遊しておったら引っ張られた口だな」

「私もいつも空から見ておりましたわ」


「えぇ? い、いつの間に…」


 まさかの既に契約済みを言い渡されて戸惑ってしまった。だって、この本には確か難しいって書いてあったけど…。それに俺承認すらしてないし。


「とは言え、正確にはまだ契約ではないがな。ガハハ」

「どういう事?」

「主殿の体はまだ発展途上。我々が契約を行えば、逆に我々の存在が主の成長の邪魔になるでしょう」

「そ、そうなの?」


 理屈はこうらしい。

 精霊契約を行うとメリットとしては、精霊から恩恵として魔力量の増加、魔法の効力増加(これは俺に意味がない。)を受ける事が出来るらしいのだが、デメリットとしてオレ個人の魔力量はその後一切増えなくなるらしい。

 俺の魔力量は今もなお成長を続けているらしく、それが止まるまでは本契約はしない方が良いと精霊のみんなが教えてくれた。


 ついでに言うと本契約までの間は俺の修行の面倒を見てくれるらしい。

 ↑

 これはラッキー。


「それなら、僕が大人になるまで待っててよ」

「そ、そうなんじゃが……」


 俺のセリフにノームのバッカスは答えにくそうに話してきた。すると、プロメテが、


「ガハハ。仮契約の有効期限がたった2年だけなんだ」


 俺が頭にクエシュチョンを沢山作っているとプロメテが笑いながら理由を教えてくれた。


 精霊の世界では、契約を一旦待つ事ができる制度があるらしい。

 理由は、契約者が未熟で様子見したいとか、前の精霊の契約が残っていたりだとか、何らかの理由で今契約をしたくない(出来ない)場合の措置なんだとか。

 そういう組合があるらしい……。


 精霊界の役所で申請すれば最長2年までは仮契約で行けるらしい。

 なんだろう。精霊界の制度がこの世界よりしっかりしていて正直ビビった。人間界にも広めたらいいと思うよ。

 

 で、今回はその制度を上手く活用して俺の魔力の上限を出来るだけ上げようとしてくれているって訳だ。


「あぁ~。なるほど、でも皆2年後1回契約を打ち切っても直ぐに僕と仮契約すればいいんじゃない?」


 打算だけど名案だと思った。思ったけど…考えが足らなかった。俺は、以前住んでいた世界のゲームの知識から精霊は1種族1人しか存在しないと思っていた。

 だけど、もうちょっと考えるべきだった。今は反省している。


 そう。組合が存在するのに一種族につき一人な訳が無い事に。

 俺がそんな事を言った瞬間に皆の顔が引き攣った。


「「「「「次は無いん(な、です、の、ですわね)じゃ!!」」」」」


 一斉にハモってすごんでくる精霊たち。

 俺を囲んで皆が叫んでくる。とっても顔が近い・・・。


 この世界における精霊には種族名があり、名前がある。プロメテにはイフリート族でサラマンダー種、とかね。…待って、言いたいことは分かる俺もその話を聞いたときどう考えてもオーガ種じゃね? って思ったもん。

 ま、今はそれを置いといて。


 何故そんな種族があるのかと言うと、同族でも多数存在するからだそうだ。

 サラマンダーも居ればファイヤーリザード種もいる。(種=名字 らしいのだ。)

 そして、精霊の種族間で村や街を形成し、交易などをしながら生活しているらしい。

(ますます人間みたいだぁ)


 こちらの世界の土や空気、水や火に宿りマナを形成しているのが主な仕事らしい。

 こちらの世界ではその対価を払っているらしいがどうやってかは俺も知らない。

 面白そうだから今度、調べておこう。


 稀に俺のように精霊と契約をする人も居るらしいが、職業でも花形で人気職なんだと。しかも複数契約できる人は更に稀らしく。


「競争率が半端ないんだよ!!」


 皆にツッコまれた。


 更には、『この機を逃すと次は順番待ちしている精霊に契約権利が回ってしまう』なんてこの世の絶望みたいな顔で言われると何も言えない。


「ワシの種族で今、大体10000前後の精霊がワシ等がコケないか狙っとるよ」

「私の所では、精霊長クラスなどもおりましたね。アイツ等忌々しい権力を使って私を落選させようとしてました」


 バッカス呟くとアクアが同意した。

 は? 何そのドロドロした感じ…。ますます前の世界に似てるんだけど。精霊界の方がここより文明が進んでるんじゃないか?


「そうなの。みんな、僕たちの事を今も”オチロ。オチロ。”って祈ってるの」

「主が超優良物…もとい、力の持ち主ということでございます。」


 セティが愚痴り。カズハは…俺の事、有料物件とか言ったか?

 まぁ、俺としては断る理由がない。皆が良ければこのメンバーで良いんだけど…。


「皆が良ければ、僕は皆と一緒に居たい」

「「「「「おぉ。」」」」」


 皆が喜んでくれた。俺もこれで契約した気持ちになれる。


「折角ですから主が5歳になるまで、我々も主様の訓練に付き合うことにしませんか?」

「おぉ。それは名案だ」


 おぉー。俺もそろそろ体を鍛えたいと思っていた所だったから、凄く助かる!!


 アクアの提案にいち早くプロメテが反応する。

 というか、プロメテって立派な体躯に恐ろしい表情と片言に喋るせいで怖いんだよね。


「く、訓練っていうのは、どういう内容…ですか?」


 プロメテが怖いけど、一応は内容を聞いておかないと…。

 だった、内容によっては、筋骨隆々の五歳児爆誕とかなる訳でしょ?


 それは嫌だ…。


「ふむ…。それは当然肉体…「魔力増加と魔力流体、後は魔術連想とかですかね?」」

「ふむ…その辺が妥当じゃな」「いや…筋肉」

「どうせなら、混合魔術まで目指しませんか?」

「あっ、良いね。僕の風とアクアの水を使った魔術とかやってみたいね」


 …精霊の皆(プロメテ以外)が俺の育成方法にやいのやいのと話をしている。


「ふむ。どうやらその辺を中心に教えるとしよう。魔力はもう少し高めたほうが良いかもしれんぞ?」

「肉体強化は付けないのか? それさえあれば、敵なんて一撃だ。」


 プロメテは頑張るなぁ…。

 他の皆が冷たい目を向けているのに一向に引く気配がない。

 プロメテだけ何となく立ち位置が理解出来た。


「…えぇーと、一応僕にも内容の説明ってしてくれるのですか?」


 正直に言おう。皆が何か言っていたが、『魔力』の部分とプロメテのいう筋肉強化意外理解出来なかった…。


 一通りの説明を受ける。

 精霊の皆が教えてくれるのは、あくまで『魔力』を中心とした構成を取るらしい。

 何故なら彼らがこの世界に来るには契約者の魔力を使うからとの事。

 そして、頻繁に魔力切れを起こしていては寿命を縮めるらしい。


 と、言うことで俺も納得の上魔力量向上は必須科目となった。

 で、魔力流体だがこれは魔力を使って体に流れる気を操る体術の一種らしい。戦闘技術になるらしく精霊界で流行っている戦い方なんだとか。


 流行ってる?


 まぁいいか、つづいて魔力連想。

 これは魔力を使って連想した物を具現化する魔術。

 俺が考えついた物をここの世界にあるもので作ろうというものだ。


 これがアレばこの世界で金貨を作りたい放題つくれる。

 ぐへへっ、簡単にお金が作れれば量産出来るぜ。

 ごほん。失礼、ちょっと大人向けの顔が出た。


 最後は、混合魔術についてだがこれは、


「ワシ等が付いておれば元素魔法を使うことは出来るぞい」

「そうそう、後はその元素魔法を好きなように組み合わせれば良いだけなの」

「それが、混合魔術ですよ」


 と、言うことらしい。途中から魔法やら魔術やら混在していて、分かりづらいが要は科学しろってこった。

 バッカスやプロメテは元素。で、元素を組み合わせて新しい事をしろ。と、いうことらしい。錬金は使えるので、付与すれば魔導具なんかも作れる。と言われた。


 腐るほど作った魔石を見てもらったら皆、絶句だった。

 どうやら呆れたらしいな…。でも、俺が今こんな状態なのは知ってもらう必要がある。これは、死にもの狂いでついていくって意思表示でもあるしな。


 因みに基本的な運動はプロメテに見てもらうので、彼が肉体担当、他が頭脳担当みたいな感じになるのだろう。適当ですが…

 兎に角、俺の人生やっと動き出したって感じだ。



 ・・・精霊バッカス side


 ただの小僧だと思って甘く見ていた。

 無知で魔法も使えない子供がワシ等を呼び寄せた時はまぁまぁだと思ったが、まぁこっちの世界で精々楽をさせて貰えれば程度に考えていた。


 じゃが、何じゃ。あの大量の魔石は…。

 小僧が何処からともなく持ち出してきた魔石。

 恐らく純度も最高級でアレ・・を一個持っていれば、この世界で精霊を1年は現存させることは可能だろう。それを山の様に見せつけられた。

 自慢かと思ったが、あの小僧…いや、イッセイが作ったと言っておった。


 それを聞いた瞬間。こやつ思った以上の原石じゃと思った。

 これは今後が楽しみじゃわい。

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