第4話カナリアと呼ばれた娘と死者達
高貴な女に贈られるいくつもの花束。抱擁。それを無造作に捨てる女。笑っている。笑っている。私はそれを見ている。
『彼』は女を抱いている。高貴な女は言う。あなたの暗闇が好きなの。違う、私は--。男が言う。あなたの子供を妊娠したの。女の腹には膨らみがある。でもこんな肉塊どうでもいい。あなたにさえ似ていれば。君は--。私だけのお人形。この子もあなたも。
そして『お前』も。高貴な女と私の眼が合う。『彼』はすまなさそうにしている。
--イリア、起きるんだ。『彼』の声が聞こえる。
「イリアさん。」ネルーが私を覗き込んでいる。
--私のカナリア。私だけの天使。イリア。眠っている間、激しい苦痛、この世ならざる苦痛を私は思い起こす。アナスタシアのことだ。君といる間、忘れられる。だから私とずっと一緒なのだ。君は。
--最近繰り返し故郷の夢を見る。帰ろう。私たちの故郷へ。
イグニスの声が聞こえる。
イマハネムレワガコヨ。ソノニクニヤワラカイクイヲウタレルマデ。
私は再び眠り込んでしまう。夢の中で古代文明の神官が私を待っている。赤い十字架。神をかどわかし、成り代わろうとした罪で幽閉の果て、殺された。私も王国も何度でも蘇ると十字架には血文字で書いてある。運命に抗いなさい、イリアさん。ネルーの声が聞こえる。あの機械じかけの神達を倒すんです。今は『人間』の貴方なら出来る。
高貴な女が答える。「預言者というのはいつも『この世の終わりが近い』と言う。イリア?そんな女本当にいたのか?」「あのイリアは私の『子』、末裔だよ。兄とも血が繋がってない。最初から人間ではないんだ。」「ハイランドの死者達がイリアから神を呼び出そうとねらってる。あの男をね」」
火が焚かれている神殿にイグニスは神官と共にいる。かつて殺された神官と同じ姿。「それで、ペンダントは戻ったのか。」
「オーエン。ペンダントは私では何の反応も示しません。イリアを再び呼ぶべきかと。」と、イグニス。
「ペンダントから『神』を呼び戻そう。悲惨な過去を抹消し、我々の想像力で、よりよい理想化された国を造ろう。遠き日、遠い風、長い夢が始まる。かつてこの世に存在したことがなかったような国を造ろう。」
「娘は?」
「エサにする。」
『「嘆きの壁に追いつめられ、揺かごの中でさえ鎖に繋がれていた我らに救いを!」』
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