第2話 ダンジョンへ出発
朝。八時三十分。僕、ルークは洗面所で顔を洗っていた。
「ぷはぁー」
(……面倒なことに巻き込まれたな……。出来ればやりたくなかったんだけど……)
昨日僕はドワーフのシーリーとか名乗る幼女にダンジョンマスターやれとか言われてここに至るわけなんだけど……。その仕事がもうめんどくさいことこの上ない!! そもそもダンジョンマスターやることになった経緯とか他にも色々と詳しく聞いてないんですけど!!
僕は大きく溜め息をつきながら、そこら辺にあるタオルを手に取り顔を拭く。
「まあ……。聞きたいことは本人が来てからでいいか……」
僕は、顔を拭き終わり洗面所を出て、着替えの入ってるタンスがあるリビングへ行く。
ぼくの家のリビングには、ソファー、テレビ、テーブルと椅子、キッチンが設置されている。僕の家はリビングとお風呂、トイレぐらいしかなく、この世界の一般の家よりは少し貧乏ぐらい。え? ダンジョンで金が稼げるじゃないか? それがそうでもないんだよ~。モンスターを倒したら素材がドロップするじゃん? うん、そういう仕組みなんだよ。で、それをギルドの施設内にある「素材換金所」があるんだけど、そこの換金率がもう低くて低くて……。あ、換金率っていうのは、いわゆる需要と供給の関係。つまり、需要が多ければ自然と値段は上がり、需要がなければ、値段は下がるんだよー。
僕は、リビングにあるタンスの引き出しの一個を引き、今日着る衣服を一式取り出す。黒のコートに、灰色のフィンガーレスグローブとシンプルなデザインで統一されている。そして、二本の鎌状の武器も忘れず持参する。あとアイテム袋と立方体の形をしたものも忘れない。アイテム袋は袋のサイズこそ小さいが、見た目以上に物が入る優れ物だ。さて、そろそろ時間のはずだ。
バッコーーーーーーン!!
「ルーク!! 迎えに来てあげたわよ!!」
家の扉を凄い勢いで開けて入ってきたのは幼……いや、シーリーだった。
「はぁ……。人の家に入るときはノックして一声かけるのが常識でしょ……」
ルークは大きく溜め息をつきながら小声でそんなことを呟く。
「……? 何か?」
「な、何でもないよ」
「ふーん? まあいいわ。それより早くダンジョンへ向かうわよ」
シーリーはそう言うと、僕の手を取る。
「わ、ちょっ!?」
そのまま僕の家を出て、ダンジョンへ向かう……前に僕はシーリーに待ったをかける。
「家の鍵閉めないと……。誰が僕の家に入って来るか分からない」
そうぶつぶつ言いながらズボンのポケットから家の鍵を取りだし、家のドアを閉め、鍵をかけた。
「取るもんなんかありゃしないわよ。あなたの家になんか」
「う、うるさいなぁ。用心に越したことはないでしょ?」
「さあ? どうだか」
僕が何か言う度にいちいち言ってくるんだけど。まあ、いいや。気にしないでおこう。
「さあ、今度こそダンジョンに向かうわよ」
「わかったよ……」
僕は苦笑いしながら、先を行くシーリーに続いた。
「その武器珍しいわね」
シーリーが僕が背中に担いでいる二本の鎌を凝視しながら言う。
「うん。そりゃ、この武器何処にも売ってないからね」
僕たちは人もそこそこ多いだだっ広い草原の一本の道を歩いている。この道はダンジョンへ続く道であることもあってそこそこ整備されている。
「……? 売ってないってどういうことよ?」
「……僕が作ったんだよ。この"ラグニール"は」
「ラグニール?」
「この武器の名前だよ。僕がつけたんだ」
「へー。そうなの……ってさっき空耳かもしれないけどその武器あなたが作ったって言わなかったかしら?」
「空耳とは心外だな……。この武器は正真正銘僕の手作りだよ」
僕は少し苦笑いしながら応えた。
「……え? あなた鍛冶士だったの?」
シーリーは心底驚いたような顔で僕を見る。
「いや、鍛冶士じゃないけど……。一応鍛冶スキルは持ってるんだよ」
「そうだったのね。だからそんな珍しい武器を……」
シーリーは納得したように頷いた。暫くしてシーリーが足を止める。
「着いたわ」
シーリーにそう言われ、目の前の壮大な「樹木」を見上げる。太い枝が絡まりあい、太い幹を形成している。葉がうっそうと生い茂っており、また、絡まりあった太い枝も空を貫くように伸びておりてっぺんが全く見えない。
(このダンジョンはまだ行ったことがないな……。しかも一時間以上歩いてやっと着いた距離だしなぁ……。あ! シーリーに聞きたいことがあるんだった!!)
ルークは自分の聞きたかったことを思いだし、シーリーに尋ねる。
「あのさ……。このダンジョンは何のダンジョンなの?」
「ここは"風のダンジョン"よ。暫くあなたはここでダンジョンマスターをすることになるわ」
「暫く?」
「6ヵ月に一回ダンジョンマスター会議が定期的に開かれるの。今回のは緊急だったけど……。そこでダンジョンマスターの入れ替えとかが決まるのよ。あ、入れ替えって言ってもダンジョンマスター同士で入れ替えるのが普通で、今回みたいなのは特例なのよ」
「そ、そうなんですね……」
僕たちはそんなことを話しながらダンジョンの中へと入って行った。
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