第3話 ルークの実力 ー1
ダンジョンには、炎、水、風、土、光、闇の六属性のダンジョンと、無、時、錬の三つの特殊属性のダンジョンがある。僕達は今、その中の"風"のダンジョンの五十階層に来ている。ここにダンジョンの休憩所及び、ダンジョンマスターの部屋があるからと言われてやって来たんだけど……。ダンジョンマスター専用の裏道があることもシーリーから教えてもらった。そこはモンスターも全く出ない安全地帯らしい。
なのに、何故か僕はシーリーに実力を示せだの言われてその裏道を使わずにダンジョン内にいるモンスターを倒しながら、冒険者達が普段使う道を進んでいる。
「はぁ……。めんどくさいなぁ……」
僕はそんな独り言を呟きながら、シーリーが後ろ、僕が前に先行してダンジョンマスターの部屋を目指す。ここ五十階層はベテランの冒険者でないとなかなか来られないような場所で、駆け出しは勿論のこと、中級冒険者もここに来るのは厳しいだろう。"風"のダンジョンは、駆け出しから、ベテランまで広く利用されているダンジョンだ。だから、その分怪我をする冒険者も多いのだと思う。
因みに各ダンジョンには、エレベーターみたいなのがあって、自分の実力にあった階層へいくことができる。僕達は今回それを使ってここまで来た。
「あ。あとボスとも戦ってもらうからね。普通はパーティーで倒しに行くんだけど……。あなたにも私にもそんなメンバーいないでしょ? だから、あなたの実力でできるところまでやりなさい。もし、駄目そうだったら私がやるから安心していいわよ」
「安心できる要素がない……。一体どこをどう見れば安心できるんだろう……。しかも、何か妙に貶された気がする……」
ルークは再び溜め息をつきながらそんなことを呟く。
僕達はそんなやり取りをしながらどんどん五十階層をボスのいる方向へと進んでいく。
緑色の、人間の姿に近い剣を持った魔物(ソードゴブリン)、鎧を纏った筋肉ムキムキの巨人(アーマーオーガ)、狼に似たような姿をし、全身を鋭い棘で覆われた魔物(ソーンコボルト)などを次々と二本の鎌で切ったり、抉ったりしながら倒していく。
「あ、あなた……見た目によらず強いのね……」
「何だよ……。見た目によらずって……。僕ってそんなに弱そうに見えるのか……。まあ、それも仕方ないのか……」
ルークは大きく溜め息をつきながらそんな自虐じみたことを言う。ルークは真っ白の髪に、百六十センチメートルくらいで太くなく細くなく、普通の体格だ。だが、冒険者の平均的な体格では、ルークは小さい方なのだ。因みに、冒険者の平均は身長175センチメートル、体重65キログラムとルークとは比べ物にならないくらいの体格なのである。このデータはギルドの諜報員が独自に調べたものらしい。
僕達がモンスターを倒しながら歩みを進めて行くうちに、ついにボスの場所までたどり着いた。そこはだだっ広い場所で、その場所に入る前に何やら網の扉が設置されており、その傍には小さい直方体型の装置があった。この網の扉は外見は脆そうに見えるかもしれないが「ラゴール」という超硬い金属が使われており、剣撃や魔法を打ち込んだぐらいじゃびくともしない。まあ、大方安全のために取り付けられているのだろう。その傍にある小さな直方体型の装置はギルドカード認証システム装置である。このシステムによって、ギルドの方に情報が行き渡り冒険者達の安否を確認することができる仕組みになっている。因みに、ギルドカードは全員所持する事を義務付けられている。ギルドカードはいわゆる身分証明書のようなものである。
僕は、直方体型のギルドカード認証システム装置に自分の持っているギルドカードをかざす。
「認証完了しました。ゲートを解錠します」
直方体型のギルドカード認証システム装置からそう音声が発せられた後、だだっ広い空間への隔たりとなっていた網の扉が開く。シーリーもギルドカードをかざした後僕達はボスのいる空間へと足を踏み入れる。
「……? ボスがいない……?」
ルークは辺りを見回すもボスらしきモンスターがどこにも見当たらない事に困惑する。
「……おかしいわね。気配は感じるんだけど……」
それはシーリーも同様だったようで、ボスが見当たらないことに少し困惑していた。と、その時。
「ー!?」
ルークは危険を察知し、ジャンプしながら、後退する事で「それ」をかわす。ルークが「それ」をかわした、その直後。
カッッッッッ!!
「それ」が地面を切り裂き、裂けた所を中心に爆発を引き起こしたのだ。だが、ルークはその爆発に反応し、もう一回跳躍して、後ろに一回転する事で回避する。
「うぉ!? 危ない……。間一髪か」
「ルーク!! 上よ!!」
シーリーがそう言い天井を指差す。ルークもシーリーの声に反応し、天井を見る。そこには……。
蜘蛛の姿をした、体長約三メートル、全身真っ赤で頑丈な顎を持ち、前足二本が鋭利なナイフ状の形をしている魔物がいた。
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