ダンジョン経営なんてロクなもんじゃない!?

Mei

第1話 プロローグ

「あなた、ダンジョンマスターになりなさい!!」

 今、開かれた家のドアの傍に立ち、こちらを指差すフードを被った、身長も小さい少女がいる。

「……え?」

 僕の耳も遂に悪くなったかー。何か変な言葉が聞こえた気がするなぁ。まあ、聞き間違いもあるしもう一回聞いてみよう。

「そこの……えーと……幼女さん?もう一回言ってもらっていい?」

「私は幼女じゃない!! こう見えてもあなたよりも大分年上なんだけど!?」

 幼女さんは腰に手を当てプンスカ怒っている。……うん。威厳が全くない! むしろ幼さがより一層強調されたように思える!

「はあ……。私はシーリー・レイフォルン。ドワーフ族よ。一応、これでも九ダンジョンマスターの一人なんだけど」

 ドワーフ族のシーリーと名乗った少女は、やれやれという風に溜め息をつく。

「あの……。住居不法侵入罪で捕まるから早く帰りな? 結構真夜中だから危ないよ?」

 僕はシーリーを優しく諭す。うん! ここは寛大に接した方がいいよね! 女子には優しくしろって誰かが言ってた気がするし。

「だーかーらー! 確かにそうかもしんないけど!! あなた人の話聞いてる!?」

「うーん……。何だっけ?」

 シーリーは額に手を当て、再び溜め息をつく。

「……。あなたにダンジョンマスターになってもらうために私はここに来たの」

「……え。えええええええぇぇぇぇ!!」

「今更驚くのね……」

 ぼ、僕がダンジョンマスター!? 確かにダンジョン探索は好きだけど……。ダンジョンの運営となると面倒くさいんだよなぁ……。縛られるのは僕の主義に反する。丁重にお断りしなくては。

「あ、あの……。誠に申し訳ないんですが……」

「あ、因みに九ダンジョンマスター会議で決定したことに拒否権は認められないから。訴えるのなら九ダンジョンマスターの長にでも訴えてね」

「なんでだよ……」

 何が悲しくてダンジョンマスターなんかやんなきゃいけないの? 何で、九ダンジョンマスター会議で僕の名前が出てくるの? あり得なくない? ……。いや、あいつなら軽く僕の名前を出しそうな気がする。はぁ……。しょうがない。

 僕は頭をポリポリと掻きながらシーリーに問う。

「……ダンジョンマスターって基本的にどんな事をするの?」

「そうね……。基本的には……」

 シーリーの話を要約するとこうだ。

 ダンジョンマスターの主な仕事は、危険なモンスターの駆除、ダンジョン内の冒険者の監視と安全の保証、ダンジョンコアの管理、ダンジョンの修復、ダンジョンの定期探索、ダンジョンのモンスターの管理である。

 ダンジョンコアとは、ダンジョンの構造の中心となっているコア(中核)のことで、これはこまめに管理しないとやばいらしい。

 次にダンジョンのモンスターなんだけど、これは、魔石が構造の中心だが肉体は本物なので当然襲ってくるし、切ったら血だって出る。まあ、これはこの世界なら誰でも知ってるよね。

 僕は一通りシーリーから説明を受け終えて、一つ溜め息をつく。

「……。何か大変な仕事を持ちかけられたよ……」

 僕は、そう呟きながら俯いていた顔を上げ、シーリーを見る。

「……。どうせ拒否権はないんだろ」

「無論ね」

「即答かよ……。仕方ない。ダンジョンマスターやるよ」

「じゃあ、決まりね。ここに書類があるからそれに書き込めば手続きは終わりよ」

「わかったよ」

 僕は書類に名前、性別、冒険者ランク等の必須事項を記入した。因みに僕の冒険者ランクはない。だから、無しと記入しておいた。だってギルド入ってないから。これは仕方がない。

 僕は書類の書き込みを済ませ、シーリーにその書類を渡した。

「はい。確かに受け取ったわ。名前は……ルーク・ハインド。性別は男。冒険者ランクは……。はあ? 無しってどういうことよ!?」

「いや、だって僕ギルド入ってないし……」

 シーリーは今日何度目か分からない溜め息をつく。

「まあいいわ。明日、あなたがダンジョンマスターをするダンジョンへ案内するわ。その時にあなたの実力も見せてもらうわ。もし、実力が示せなかった場合はダンジョンマスターを交代してもらうことになるかもしれない。……。明日、朝九時。またこの家に来るから。じゃあ」

 用件を伝え終えたシーリーは家のドアを閉めずにその場を後にする。

「人の家のドアくらい閉めてくれよ……」

 僕はそう言いながらドアを閉め、ソファーの傍まで移動すると、そのまま仰向けに倒れ込むようにソファーに身を預ける。

(はあ……。今日は一段と疲れた……。今日はもう何もする気力もないな……)

 僕はそのまま目を閉じぐっすりと眠り、明日に備えるのだった。

 




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