旧校舎の魔法少女と玉手箱の日記帳

大創 淳

第一話 この子の七つのお祝いに。


 冬過ぎて春……


 今日はお誕生日。

 今日で七さいなの。


 そして今日は来たの。千里せんりの町で最も大きいとうわさされるデパートに。



「この子の七つのお祝いに」

 と言って、パパが、ここへ連れてきたの。


 それからね、間もなくなの。

 ブザー音とともに始まった。


 毎週欠かさずている大好きなアニメのキャラクターショーが開催かいさい


「わあ」

 と、声にするくらい大喜び。


 その大好きなアニメに登場する主人公は、わたしと同じ名前。


 こっち来た。握手あくしゅしてくれた。

 それから現れたのだ。敵キャラ。つかまって舞台ぶたいへと連れられ、


「みずきちゃん、助けて」


 わたしの名前だけど、呼んだ子は、とっても強い女の子でね、変身できるの。マジカルステッキを使って、さあ、マジカルエンジェル・みずきちゃんの登場だ。


 そして構える。

 ねらいを定めて、必殺技のマジカル・フラワー・シュートが炸裂したの。


 心に咲くお花。みんながハッピーになれるから、とっても大好きなの。

 だからあこがれ……


 するとね、ビッグなお誕生日プレゼントなの。


 四季の日記帳と言ってね、春、夏、秋、冬の風景をバックに、みずきちゃんが描かれているの、表紙も背面も。それからDVDとポスターまで付いた初回限定版だったの。


「はい、大切にするのよ」

 と、みずきちゃんが手渡てわたしてくれたの。


 ヒシッと抱きかかえる。小さな身体に大きなプレゼント。


「ありがと、みずきちゃん」

 と、お礼の言葉も忘れず。


 ……正確には、みずきちゃんにふんしたお姉ちゃんだけど、わたしにはみずきちゃん。



 それから、わたしは書いたの。

 みずきちゃんのように強くて優しくなりたいから。わたしには憧れのヒーローなの。


 パパとの約束も守ったよ。


 三日坊主みっかぼうずにならずどころか……

 日記をつけ始めてから、もう三ヶ月。小学二年生の夏をむかえていた。



 それでね、あることに気付いたの。


 日記には、とっても素敵すてき魔法まほうがあるんだよ。


 それは玉手箱のように、時をえて……

 そうだね、タイムリープと言うのかな?


 それはね、遠い未来のあなたへおくるメッセージなんだよ。



 ……だから、その時が来たらわかるよ。


 あなたが玉手箱を受け取った時に、この物語は始まるの。


 浦島うらしま太郎たろうの物語と大分と違う、旧校舎きゅうこうしゃの魔法少女のお話。


 迷うことなく開けてみて。


 白いけむりの代わりにね……瑞希みずきと漢字二文字、名前の書かれた日記帳が入っているから。



 遠い未来のあなたは、もうすっかり大人。


 でもちょっと待って。あなたはもうすぐママになるのね。


 だかられて欲しい。


 日記帳にたくされた魔法の言葉たちに……



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