協力者

 用語解説


 物質ぶっしつプリンタ:現実世界げんじつせかいの3Dプリンタと違って、ゲーム世界の物質プリンタは一種類いっしゅるい原材料げんざいりょうだけ、いしだけを使って全ての物を創造そうぞうする。ただし、創造物そうぞうぶつはMPを宿やどすことはできない。ゲームれき67年、物質プリンタの応用おうよう戦場せんじょうまでひろがった。


 赤城塞あかじょうさい:プレーヤーが悪魔島の七色なないろの土の中、赤い土を攻略こうりゃくしたあかしとしててられた城塞。この城塞が機能きのうしたかぎり、悪魔島での攻城戦こうじょうせん発生はっせいした場合ばあい、プレーヤー陣営じんえい兵力へいりょく最大さいだい10%まで増員ぞういんできる。


 青城塞あおじょうさい:プレーヤーが悪魔島の七色なないろの土の中、青い土を攻略こうりゃくしたあかしとしててられた城塞。この城塞が機能きのうしたかぎり、悪魔島での攻城戦こうじょうせん発生はっせいした場合、プレーヤー陣営じんえい兵士へいしのHPが2ばいになる。


 使つかあばれやすい魔法動物まほうどうぶつ成功せいこうおさえ、街の中にうと、動物は使い魔に変化へんかする。変化の時まち紋章もんしょうが使い魔の体にかぶ、飼い主が紋章にて、一つだけねがうことができる。使い魔はその願いをかなうため新しい能力のうりょくにつける。


 ダイヤモンドゲーム:黒と白、二色にしょくのコマで戦うボードゲーム、チェッカーにも呼べる。悪魔島のNPCの間、とく年上としうえの間でとても流行はやっている、理由りゆう不明ふめい時々ときどき老人ろうじん戦場せんじょうぜたプレーヤーもいる。


 内容をお楽しみに



「戻ったの、ハラビ」

「……あぁ」

返事へんじおそー…どうしたの!さむい?顔が真白まっしろだよ!?」

「寒くはないが…こわい、どうしようもないくらいに……」


 アトリエに帰ってきたハラビは全身ぜんしんびしょれ、体がわなわなふるえて、衣裳いしょうすそから雪のみずしたたちる…凍傷とうしょうした手のひら、一本凍死とうしした花をにぎっていた。


「早くこっち来て、臆病主おくびょうぬしハラビ。私がきしめてあげる」

「ありがとう、ミーちゃん」


 少女は氷の国からのかえびと背中せなかやさしく両手りょうてまわし、やわらかい感触かんしょくあたえてくれた。ハラビは高い高い芸術家げいじゅつか、少女が精一杯せいいっぱい踵を地面から離れても、彼の鎖骨さこつにキスのが限界げんかい。二人の間でがあった。


「どうして?どうしてハラビはアイス人間になったの?私の知らない女に会いに行くじゃなかったの?」

「会ったよ。でも帰りはみちした、はかの花が死んだと見て、生きたものとわった」

「やっぱり墓に行ったのね、ばかハラビ…大丈夫、私の勇気ゆうきけってあげる」

「ありがとう、綺麗きれいなミーちゃん、勇敢ゆうかんな女の子」

「ミーちゃんは世界一番勇敢な女よ、だから臆病主ハラビのそばられる、こういうバランスが大事だいじなの……」


 ミーちゃんはハラビのコートをて、床に捨てて、面白おもしろ光景こうけいを作った…コートは壁にもたれて、そのまま立っていた。なぜ墓のあたりにそんなに寒いのか?不自然ふしぜんだ。


「……もう大丈夫?」

「あぁ、ミーちゃんのぬくもりが私を救てくれた」


 ハラビは華奢きゃしゃな女の子をお姫様抱ひめさまだっこし、リビングのソファーにそっと置いた。ソファーの上はミーちゃんのお気に入りクッションが一杯いっぱい、テーマはグラスとプラスチックのダンスシューズ、アイデアは彼女が学生時代がくせいじだい落書らくがき。


「シャワーびないの?」

「あぁ、ゲームに戻る時間だ」

「ダメよ!びしょれのままじゃない」

「大丈夫だ、部屋に戻って着替きがえばいい、死にはしない」

「……ふん、好きにすれば。花はどうするの?まだ助かるの?」

かえるさ、あの水があれば死にはしない。ミーちゃんに頼みたい」

「わかった、それも女の仕事なのね」

「ありがとう、綺麗な人」

「早く帰ってきて、一緒いっしょにお茶を飲むの」

約束やくそくした」


 ハラビは自室に戻り着替えてから学習装置がくしゅうそうち付きのヘルメットをのうに着け、シーケンスのスタートを待った…シンプルな部屋、でも壁と床の模様もようから家具の装飾そうしょくまでは全部ハラビの絵、近頃ちかごろここの絵も少女のふで純白じゅんぱくに戻すだろう。

 ハラビは自分の絵に一目置いちもくおかず、ゲームの世界へと、戻った……



「……ありがとう、君」

「おかえりなさい、ハラビさま」

「またかなしいかおをしていたね…先ずは君の声を聞きたい」

「ふざけないでください!…私はハラビ様のこれからを心配しんぱいしたのです、一緒いっしょに考えてください!」

「ありがとう、でもふざけていないよ…ブローチとなみだの絵をアップロードした、見たのか?」

「はい、ハラビ様は文芸の神さまが最もきな画家がかでした……ごめんなさい、あの時はいてしまって…」

「大丈夫だ。あの時は涙のせいで深追ふかおい出来なかった。今は教えてくれないか?サフランのこと」

「はい、でもお待ちください」


 NPCの少女は大広間おおひろま中央ちゅうおうから離れ、『物質ぶっしつプリンタ』を起動きどうし、新しい絵を作った。絵のテーマは少女の涙がブローチにぶつかった瞬間しゅんかん背景はいけいは緑の魔法の光。

 少女は大きな絵を両手にかかえ、王座おうざソファーの手置ておきにかざった、キャンパスはまだ余熱よねつが……次はハラビのいて、彼を王座おうざソファーの上に座らせた。


「ハラビ様…電子でんしサフランでもかたちがあります。ハラビ様が見た小さな結晶体けっしょうたい、それは電子サフランの真実しんじつです」

「どうしてそのようなまがものを?」

「このような形で印の表面ひょうめん付着ふちゃくためです。印とちがってこわれることも、がすこともできます。先ハラビ様がオフした間、簡単かんたんにあなたさまの財産ざいさんうばえるのですよ」

「そうか…もし大量たいりょうの金を印の表面に付着するとどうなる?」

「印の価値かちがります」

「そうか!悪魔と同じ理論りろんか!」

「ハラビさま?」

「本当にありがとう、ながあいだ疑問ぎもん解決かいけつした…もう一つ質問しつもんがある、大丈夫?」

「どうぞ、私のかぎり何なりと…」

「今この島、悪魔と一番大喧嘩いちばんおおけんかしたのは誰?」

前線ぜんせんのレディービイランドです」

「彼女に会いたい、それは私のこれからになる」

「わかりました、ハラビ様ののぞみであれば協力きょうりょくさせていただきます…微力びりょくながら」


 少女は緑のブローチを一回転いっかいてん、周りの光が一瞬点滅いっしゅんてんめつし、緑からあお、色が変わった。床の転送陣の紋章もんしょう世界語せかいご文字もんじも色とともに変わった、新しい色が運命うんめいすすみちらし出す。


「ありがとう、また助かった、二度目にどめだ」

何度なんどでもお助けします…さあ、こちらへ」


 ハラビは少女の目の前へと歩き、転送陣の上に立った。少女は両目をかたじ、彼を見送みおくりことが出来なかった…


「これから前線ぜんせん城塞じょうさいへと転送てんそうします」

「ここの城塞との違いは?」

「ここは『赤城塞』、あっちは『青城塞』です」

「わかった」

「ハラビ様の体はまだ不安定ふあんていなので、転送した後しばらく目に見えないかもしれません。どうか無茶むちゃを…」

「あぁ、見えるまではその場で待つよ」

「そうしてください。では、サヨナラ…」

「ありがと、もう君とは会えない。でも絵はちゃんとのこした」

「ありがとうございます……」


 まぶしい白い光が青い蛍光けいこうはらい、ハラビのふわふわした服がふくらんで、体は光の粒子りゅうし同化どうかし床の風穴かざあなの中にまれて、服は爆発ばくはつひかりはねになってひらひらとちる…最後に残った印は重力じゅうりょくに引かれて点灯てんとうした転送陣の中央ちゅうおうへと、落ちった……


「文芸の神様、どうかハラビ様と案内人あんないにん出会であいを見守みまもってください…」



 青い城塞へとばした後、ハラビの目が失明しつめいした。NPCの少女がったとおり、接続せつぞくばかりの体は不安定ふあんてい過ぎたのだ。でも大丈夫、もう一人のNPCの少女が彼のいて、壁際かべぎわ椅子いすへと誘導ゆうどうし、やすませた……

 画像がぞうは見えないけど、口の声と足の音がハラビのみみとどく、なくペラペラと…ここはれた赤城塞と違い、工作こうさくしていた。しかし、誰もハラビにこえけて来ない、みんな自分のビジネスに大忙おおいそがしくて、他人にかまひまはなかった。


 ……ハラビの視力しりょく回復かいふくするまで、15分かかった。良くなった彼が立ち上がり、新たなNPCの少女と会釈えしゃくしてから階段かいだんを降りた。プレーヤーを探すにはプレーヤーにうしか手段しゅだんはなかったから…


 階段はそこまで破損はそんしたわけじゃないが、やはりふるい、材質ざいしつにも光沢感こうたくかんがない。城塞の名を持つ場所に装飾そうしょくはいらない、ただ使えればそれでいい、戦いのため存在そんざいした建物、それ以上いじょうでもそれ以下いかでもない。


 まれ人混ひとごみにまわされたハラビのひろ視界しかいに、一本ながい銃が入った、いや、とも言える武器ぶきだ。銃弩じゅうど背負せおう人が非常ひじょうに高いのだが、武器の先端せんたんさらに彼の髪型かみがたより20センチをえる。でも長さ以外いがいはいまだわからない。そんな武器にハラビはかれた。


 しばらくしてあの人は酒場さかばみたいな場所に入った、ハラビもその後についたが、先に話かけたのは彼の方だ。


「よう、兄ちゃん、さしぶり」

「私に?…すまない、人違ひとちがいだね」

「何とぼけてんのてめえ、先からずっと俺をつけたのくせに!」

「君の武器を見てこのような場所に来た、それだけだ。君とは面識めんしきがあったことはない、少なくとも記憶きおくの中にはのこされていない」

「ふざけんな!この俺に一泡吹ひとあわふかせるつもりだろが!?」

「何故?理由りゆうはない」

「金だ、無くした150万!」

「あ、足りないがくだね、もう忘れた。じゃ…」

「じゃ…じゃねぇよてめえ!!」


 ルシが激昂げっこうしハラビのえりつかんで片手かたてで彼を持ち上げた、なかなかの腕力わんりょくだ、超長ちょうちょうの武器を持つことはある。


「誰だい!?我が家のなか大声おおごえを出したゲス野郎やろう?名を名乗なのりな」

「てめえに用はないよ、ビイランド。あっちいってな」

「ここはわしの縄張なわばり、そしておめえがわしのさわった、今すぐえな!」

「ああん?やるつもり?」

「やるじゃないのさ、このわしがおめえをなぶりころしと言うんだい。な!低能ていのう、死にたいか!?」

「てめえ!!!」


 ルシがハラビをティッシュのように床に背中せなか銃弩じゅうどこうとした…が!ハラビのそでから一匹いっぴきマフラーみたいな生き物がし、ルシの手にからんで、そのうごきをふうじた。


「くそっ!なんだこいつ、動け!」


 ビイランドは焦らずぐずつかずパンプキンサイズのこぶしまわし、ルシのストマックを直撃ちょくげき電柱巨人でんちゅうきょじんかべおもくぶつかって、まどガラス6面と共に椎骨ついこつ粉々こなごなに…つづいて余裕よゆうのセカンドコンボをたたける、腰間ようかん洋銃ようじゅう発砲はっぽうし、相手あいていん命中めいちゅう!ルシの消滅しょうめつはほんの一瞬いっしゅんまばたき、まるで神隠かみかくしのように、これは普通ふつうかたじゃない。


「ヒュー~…いい弾ったぜ!」

「ビューティフおおおおおお!」


 ショータイムの終わりと同時どうじ酒場さかば連中れんちゅう沸騰ふっとうした、奏者そうしゃ素早すばやくキーボードをたたき、曲のテンポを加速かそくさせる。人がハラビの知らない言葉をさけんだり、うたったり、おどったりして、大盛況だいせいきょうとなった。

 不思議ふしぎの死に方でもいんはやはりちゃんとのこした、もし接続せつぞく切断せつだんしていなかったらルシは今天井てんじょう一片いっぺんを見ていただろう、まわりの熱狂ねっきょうを聞こえないのだが…


「よっしゃー!いい気分になったじゃないか。次の一杯いっぱいはわしのおごりだよ~」


 ただ酒は約束やくそくされて、酒衆さけしゅうまつ気分きぶんはまだまだ続きそうだ……


「ロブ、奴のいしをゴミばこてな」

了解りょうかい、ボス」


 ロブと言う暑苦あつくるしそうに見えるおとこがルシのいんを拾い上げ外に出た、NPCのボーイもガラス破片はへん掃除そうじを始めた。


「よう、大丈夫かい?色男いろおとこ

「あぁ、ありがと」


 ビイランドが地面にたおれたハラビのかたつかんで、片手かたてで彼を姿すがたかれた。先のきたマフラーはいつの間にかビイランドのくびいこいのを見つけ、安定あんていになった。ただビイランドの巨体きょたいあいまってマフラーよりリボンと呼ぶ方が適切てきせつだろう。


「この子はマーブよ、よろしく…あんた何者なにものだい?」

一般人いっぱんじん学者がくしゃ前線ぜんせんのビイランドをさがしている」

「わしのことさね。でもとぼけるのは無駄むだだよ!マーブに見つけられ時点じてんで一般人はないのさね」

「あぁ、いい『使つか』に見える。すまない、まだ戦勝せんしょうがないのは事実じじつだけどね」

「ハハハっ!戦勝はいったい何年前なんねんまえはなしなんだい~…遠慮えんりょはいらないよ!用件ようけんを言いな」

「ありがとう。戦況せんきょうを聞きたい、大丈夫だいじょうぶ?」

「うむ、わしのところに来な」

「わかった」


 ビイランドは外を出る前にNPCのボーイをつかめ、彼のポケットにお小遣こづかいを入れた、それはサフランのコインだ。ハラビはボーイの笑顔えがおじゃなく、コインのことをとどめだが…ピンと来ない。


 二人が通ったのは脇門わきもん、あそこは小さなにわがあった。ロブは白鬚しろひげ老人ろうじんと石テーブルをかこんで『ダイヤモンドゲーム』をやっている、自分のボスを見て彼はかるあたまげた。ビイランドはグッドラックの手まねで合図あいずしてからハラビとかたならべた。


「わしが来てからも二年にねんだよ、学者がくしゃさん。まったくすすんじゃいないさね…こまったもんだい」

くわしいことを聞きたい。その前に、戦略目標せんりゃくもくひょうはいるのか?」

「いるよ、みなとのヘックダーだ」

「良かった!私もあそこにしい」

「そうかい。目的もくてきはなんだい?」

「10おくサー」

「10億!?ハハハっ!無理むりな話を言うねぇ~さしぶりの学者がた!!」

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