第22話 託す思いとリヒトの真実
ゾンネは俺を見て苦笑いをする。
「ルクスだっけ。貴方一体何者?」
俺はゾンネの絶望的な表情を見て、何故か快感を覚える。
「転生者だ。宝石の所持者なのか?」
ゾンネは目を見開き俺に近づいてくる。
「ルナと一緒だ。貴方ならルナを救えるかもしれない。ねえお願い私を殺してルナを助けて」
俺は目を瞑り、全てを理解する。
「宝石の所持者なんだな。宝石を継承すると前の所持者の過去が見える。ルナはお前の記憶にいるんだな」
ゾンネは悲しそうな表情で笑う。
「ええ私が宝石の所持者よ。ハイルにはバレないようにしていたけど、宝石同士は惹かれ合うのかしらね。今なら彼女にもバレてるかもしれないわね」
「俺がお前を殺してやるよ」
ゾンネは俺の肩を掴み、真剣な表情で頼む。
「ルクス一つだけお願い。ルナを助けてあげて。私はこの世界からいなくなるけど、ルナには幸せになって欲しいの」
俺は目を瞑り口を開く。
「ああ約束するよ。ルナを救ってやる」
「ありがとう。もう悔いはないわ」
俺はチートスキル
そして残りの肉体をチートスキル
ゾンネは死亡した。存在を抹消されて。
首を跳ねた快感が俺の脳に伝わる。
ああ俺は完全に狂ってしまったのかもしれないな。
ゾンネの宝石を継承すると、ゾンネの記憶が俺に雪崩れ込み、俺はその場に倒れ込んだ。
俺はゾンネの記憶をガラス越しの様な感覚で見ていた。
ゾンネは泣き虫で、いつもルナに励まされていた。
ゾンネとルナはいつも一緒だった。
二人の日常シーンが垣間見える。ルナはいつも笑顔だった。ゾンネはいつも泣き虫だった。
ある日ゾンネはルナが急に意識を失って絶望していた。
そこにリヒトが現れる。
『ルナは転生者だから普通の人間とは相容れない存在なんだ』
『転生者? 何の話なの。どうしてルナは意識を失って』
リヒトはフードを更にグッと被り、笑顔で語る。
『彼女は選ばれし存在で、だが今は魔力が膨大すぎてコントロールできずにいるんだ。ルナを目覚めさせるにはアヴァロンに行かなければいけない。そしてその先に…………いやその先はあるのかな』
そこで急に記憶が途絶える。
何だ、宝石を継承したのに全ての記憶が見えないだと? 何故だ。
「やあルクス。君にルナの居場所を知られては今は困るんだ。だから記憶は全ては継承できないようにさせてもらったよ」
「リヒト……俺の意識に⁉ お前は一体何者なんだ」
リヒトは俺の前でフードを取る仕草を見せる。
「君には素顔を見せとこうと思ってね。地球より面白い星だろう。いつか君とは戦う気がするよ。それが味方としてか敵としてかは不明だが」
リヒトの素顔が俺の視界に映り脳内に焼き付く。
銀髪のショートカットで銀色の瞳の綺麗な中性顔だった。
身長は俺と同じくらいで恐らく同い年だ。
首に十字架のネックレスをしていて、もう一つ何かを首からさげていた。
「僕はアヴァロンに行くよ。そしてその先にいる『アレ』を殺しにね」
『アレ』とは何だ? 一瞬リヒトの表情が真剣になり俺は凍りついた。
目が笑っていなかったな、今。
「なぜ地球を知っている?」
「君と同じ地球で生まれ地球で殺され、この星に転生者として転生したからだよ。僕は前世でのそして今世での『アレ』の僕にした行いを絶対に許す訳にはいかない」
な⁉ 同じ地球からの転生者だと。
やはりいたのか俺以外にも転生者が。
だがなぜだ、俺と違い転生者であることに、何より転生したことに不満を持っているように感じる。
「君に一つだけこの世界の不変の真理を語ろう。それはこの世界には一人の独裁者によって支配されているのさ。記憶の改竄すら行える独裁者によってね」
「独裁者? 記憶の改竄?」
「もう時間がない。今は一つだけ覚えておくといい。転生者の敵は転生者だと言うことを」
俺は太陽の塔の最上層で目が覚める。
そこにはリヒトの姿はなく、アウラとハイルとエデンの姿だけがそこにはあった。
「心配したわよ。ゾンネを殺したのね。私の宝石が反応しているわ」
ああゾンネを殺したんだよな。リヒトとの出会いに衝撃を受けすぎて、忘れる所だった。
「ああ無事宝石は二つ揃った。ハイルのも合わせれば三つだな」
俺の複雑な表情を見てエデンが口を開く。
「何があったかは知らぬが、兎も角アルカディア国の平和は維持されたのじゃ。もっと喜ぶがいい」
「あ、ああ」
俺はこの日自分の部屋に帰るとひたすら天井を眺めるだけだった。
ルナの居場所を探さないと。
ゾンネとの約束だ。
何より転生者がこの世界に複数いるんだ。
俺はこの世界の真理を解き明かしたい。
俺はそしていつの間にか眠りについていた。
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