視点:僕withアンドロイド―4
告白すると、僕の両親はどちらも研究者である。そして、僕よりもデータを愛している。
というと、いかにもキャラ付けしやすそうな人格であるが、驚くことなかれ、実際にそうなのである。その親としてのあり方は、間違っているのはもちろんのこと、昨今の情勢ではまず真っ先に叩かれそうであるが、僕はそんな両親を受け入れられていた。
中学校の三年間は反抗期のまま過ごしたが、高校生になるにしたがい、世の中にはさまざまな価値観をもつ人間がいることに慣れていった。それゆえ、そんな両親のあり方を不満に思わないし、許容することができる。
むしろ、喝采して尊重してあげるべきなのではないかと思っている。
そもそもの話、研究を通して知り合い、互いの頭脳を買って結婚した両親に何を求めろというのだろうか。
しかし、これだと両親に対してあまりにも冷酷な人達だと評しているように聞えかねない。確かに彼らは僕よりもデータを愛していたが、それは僕に対してなんの愛情もそそいでくれなかったというわけではない。データには劣るけれど、彼らは僕にも愛情をくれた。それは記憶にも残っている。
子供の時に父さんと一緒にしたキャッチボール。母さんと一緒に料理をした記憶。父さんと行った科学館。それから……授業参観の時に、先生の間違いを指摘したこともあったっけ。
あの時の父さんの情け容赦のない指摘を思い出して、思わずクスリと笑ってしまう。地球最後の日だというのに、全く実感が湧かなかった。
それから、夕飯後、親と一緒に居る時間はずっと会話をしていた。その時の楽しいそうな母さんの声。
これが上手くいっている家族でないとしたら、何が上手くいっているというのだろうか。さながら、教科書のようではないか。
と、そこまで考えたとき、僕は信号に気がついて自転車を止めた。周りには人がいなかったので、信号を無視してもいいのではないかという気もするが、僕は自分の道徳観に基づいて自らを制した。
というか、変なことをしたら後ろのアンドロイドに何か言われてしまう。体力が消耗している現在、変にコミュニケーションを取ることはしたくなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます