視点:僕with彼女―1
「そもそも、世界滅亡というのはどういうことをさすんだと思う?」
「そんなの考えたこともないわ」
彼女は僕の質問ににべもなくそう返した。少々、どころかかなり愛想のない反応だったけれど、これは別段彼女が不機嫌だとかそういうわけでなく、平常運転でこれだというだけである。
しかし、こうなると分かっていても何らかの回答を貰わなければ、質問をした僕はうかばれないというか、悲しい気持ちになってしまう。
「……でも、まあ、そうね。肉体的に消滅しちゃったら世界滅亡なんじゃないかしら。例えば、今みたいに月が地球に落っこちちゃったとか」
彼女はそんな僕の内心を慮ってかそんな言葉を返してくれた。そういう不器用で微妙に優しいところが僕は好きだ。……数年前に、本人の目の前でこれを言ったら、普通に殴られたけど。
ともあれ。彼女がだしてくれた回答に対して僕は微笑ましい気分でそれはあり得ないと断言した。
「例えば戦争とかで、地球上から人間が消滅することがあっても、月が落ちてくるなんてことは、まずないから大丈夫だよ。少なくとも、あと数世紀は何事もなく回り続けるさ。なんなら僕の命をかけてもいい」
僕はそう言って微笑んだ。結構本気でそう言ったんだけど、彼女は呆れたようにため息をついただけだった。
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