廃墟期記録

りょう(kagema)

2015年3月20日変化とは

変化とは取りも直さず破壊である。

今まで築き上げてきたものを蹴散らし踏み上がる。それが変化だ。新たな境地に達するには経験を重ねるだけでなく過去の遺物を捨て去らねばならない。

小さい頃、学年が変わる度にいらない教科書やおもちゃを「整理」した。それは子供が初めて実感する「変化」であったろう。私にはそれがとても憂鬱なものに思えた……。

現在というのは軸の上を移動し続ける点でしかない。過去や未来などというものは幻想であり、この現実世界には存在し得ない。頭の中にある過去とは記憶である。頭の中にある未来とは予測である。過去も未来も人間には感知できない。ならば人間の創ったこの現実世界などというものに人知の及ばぬ過去や未来などというものがありえるはずがないのだ。

時間が経つと「過去」が消えてなくなるならば、時間の流れさえも破壊である。

諸行無常、諸行無常……。

人は変化を嘆く。人はまた変化を望む。

もう元には戻らないまでにボロボロになった遺産を見れば人は惜しいことをしたと思うだろうが、何一つ変わらないのも退屈だ。

タナトスは人間を誘い込み甘美な味で我々人間の欲望を満たす。

変化を嘆くもまた人間。変化を望むもまた人間。

だから祇園精舎の鐘の音は切なく儚い。

変化とは、破壊とは死に近づくことでもある。ならば変化に逆らい過去という幻想に閉じこもるのは当然と言えよう。

諸行無常、諸行無常……。

切ないかな。

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