第14話タイムリープ3日目ー1
ベットの上で、俺は目覚める。
――四月六日。
これで、三度目のタイムリープである。前回のタイムリープでは、前々回の疑問が明かされた。前々回に学校の玄関で殺される美羽を殺したのは――恐らくは美羽の兄だ。大和は、美羽の殺人には関っていない。
だが、疑問は残る。
前々回の俺が死ぬ直前に、大和は返り血を浴びていた。あれは、誰のものだったのかという疑問が残るのだ。
「ちくしょう。途中で俺が死ぬから、どの段階で時間が戻っているのか分からないな」
前々回も前回も、俺は途中で死んでいる。タイムリープで戻せる時間は三日が限度のはずだから、俺が死んでから数時間以内にタイムリープしていると思うのだが……。
俺は、制服に着替えながら考える。
美羽を助けるためには、美郷からの電話に出ないことが得策である。しかし、それでは前の時間軸と同じで俺が屑に殺されてしまう危険性が大きい。真理も危険にさらす。
「美郷の電話にはでないで、屑をどうにかする」
俺は決意して、制服を脱いだ。
私服に着替えて、部屋を出る。
そこで、俺を起こそうとして部屋に入ろうとしていた真理と鉢合わせする。
「おはよう、お兄ちゃん。今日は、早いんだね」
真理は、私服姿の俺を見て首を傾げた。
寝ぼけている、と思ったのかもしれない。真理は、少しだけ笑う。
「顔洗ってきたら。まったくもー」
真理の言葉に、俺は首を振った。
「ああ……ちょっと、やらなきゃいけないことができてな。悪い、今日の朝ごはんは一人で食べてくれ」
驚く真理を背にして、俺は家を出る。
入学式を控えた学生としては可笑しな行動だが、もうなりふりは構っていられない。美郷の電話を取れば、美羽が死ぬ。美郷の電話を取らなければ、俺が屑に殺される。ならば前回とも前々回とも、俺は別の行動をとらなければならない。
俺は自転車に飛び乗って漕ぎ出す。
見渡すかぎり、田舎の風景。いつもならば学校に向って漕ぎ出すが、今回ばかり駅に向って走り出す。自宅から自転車を漕いで、二時間。
そこに駅があるから、俺は頑張った。
美郷からの電話を無視すれば、真理の父親はここにやってくる。そして、今日中に真理の学校へと行って花束を下駄箱へと置くだろう。あの屑は免許を持っていないから、この村にくるまでの移動手段は電車しかない。
だから、駅で屑を待ち伏せするのだ。
何時間かかるか分からないが、やらなければならない。
朝だというのに、駅は閑散としていた。都会では考えられない光景だが、駅は人々の営みからは完全に外されていた。皆、自家用車を持っているからなのだろうか。寂しい駅で、俺は隣の駅までの切符を買った。誰もいない改札口をくぐって、駅に入る。
そして、ベンチに座ってぼんやりとした。
「腹、減ったな」
さっき確認したが、この駅に来る電車は二時間に一本のみだった。腕時計を見て、俺はため息をつく。次の電車の到着まで、あと一時間三十分もある。
俺は自動販売機で缶コーヒーを買った。
あと何時間、俺はここで待ち続けなければならないのだろうか。
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