あなたの作品は必ずカクヨム美術館に展示される!

ちびまるフォイ

どうかカクヨムを忘れないで

普段はまるで反応のないカクヨムのベルマークに珍しく赤い印がついていた。

どんな罵詈雑言が飛んでくるのかと思ってドキドキしながら確認すると、


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『 カクヨム美術館のご協力のお願い 』


 ○○様、平素よりカクヨムをご利用いただきありがとうございます。


 この度、カクヨム美術館を作成するにあたってのお手伝いを

 こちらで選定した一部のユーザー様にのみお願いしています。


 つきまして、ご都合がよろしければ運営を褒めちぎる小説を投稿し参加表明とさせてください。

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なんだか面白そうなのですぐに参加表明を行った。

後日送られてきた場所に向かうとすでに大きな美術館が出来上がっていた。


「すごい、てっきり土木系な肉体労働をさせるのかと思ってたけど、違うのか」


集合場所にはほかの作家さんも集まっていた。

まだ何の説明もされてないらしく、あたりをきょろきょろとしていた。


やがて、【神運営】と書かれたTシャツを着た人がやってきた。


「みなさん、本日はカクヨム美術館のためにお集まりいただきありがとうございます」


「それで、俺たちは何をすればいいんですか?

 見た感じすでに美術館は出来上がっているみたいですけど」


「はい。建物はすでに出来上がっているんですが、中身はまだなんです。

 つまり、ここの美術館にかざるべき小説を、カクヨムはいじn――

 良識者のみなさんに選定いただければと思います」


思えば、登録してから俺は結構な日が過ぎていた。

今じゃほとんどの機能を理解しているし、流行り廃りからランキングの傾向まで骨身に染みついている。


そういうユーザーを選んで連れてきたのだろう。


「展示に関してはみなさんにお任せしますので、作家らしい自由な発想で美術館を作ってください」


「「「 おぉーー! 」」」


早速みんなで話し合って、どの作品を展示するかを決めることに。


「やっぱり展示するからには、それなりの作品だよね」

「カクヨムの歴史を作った! みたいな作品を探していこう」

「あ、それなら私結構知ってる!」


古株の作家たちを集めただけあって、サービス開始から今に至るまで

たくさん読まれた作品などの名前がどんどん上がっていく。


展示する作品が決まってからは、作品を壁にかけられている大型タブレットに映し出す。


ガラスケース越しに操作できるようパネルを離れた位置に置いて、

美術館に訪れた人が軽く内容を読めるようにした。


「ねぇ、ポップとかも載せてみようよ。作品にかかわる情報も載せたら楽しいって」


作家のひとりのアイデアで、展示物の近くには雑貨店やレンタルショップで見るポップが張られた。

作家の情報や、作品の執筆理由など、作品外の内容を近況報告やコメントのやり取りから洗い出して掲載した。


手間もかかるし、時間もかかる作業だったが、楽しくて苦には感じなかった。


自分のカクヨム愛を最大限まで表現できることがただ嬉しかった。


「できた。これで流れを作った作品は全部掲載できたね」


「そうだけど……。なんかガラガラじゃない?」


ひと通りの展示が終わって美術館を見回したときに、まだ何も展示されていない区画がいくつもあった。

結局、WEB小説の流行はパターン化され展示するほどの「抜きんでた作品」の種類は多くなかった。


「そうだ。ここからは、みんな各々の得意ジャンルごとに展示をまとめてみないか」


「それ賛成! 私、恋愛系の小説のコーナー作りたい」

「僕はアイデアが面白い作品を展示するコーナーにします」

「俺はがぜん、アツい主人公が大活躍する、アンチハーレム小説だぜ!!」


サイトでは運営が選んだ作品が特集されているが、

日ごろから「もっといいのもあるのに!」とやきもきしていた背景もあり、みんな自分の趣味を爆発させた。


ただの展示にとどまらず、ホラー作品の区画には壊そうな飾り付けをしたり

館内のBGMにすらこだわり始めるのは作家らしい繊細さが出ていた。


そして、日も暮れたころ、カクヨム美術館はついに完成した。


「作家のみなさん、今日はご協力ありがとうございます。

 おかげで美術館は無事完成いたしました。


 私たちだけで作ろうとしていては、もっと時間もかかっていましたし

 ここまでアイデアとユーザーに寄り添ったものにはならなかったでしょう」


「いえいえそんな。俺たちも楽しかったので」


「それと最後に、参加した皆さんにだけお伝えしなければならないことがあります。

 どうしてこの度、カクヨム美術館を作ることになったのかを」


急に重い声のトーンになったので、空気が変わった。


「実は……みなさんの利用しているカクヨムはサービスを終了するのです」


「えっ!?」


「しかし、サービス終了とともに、みなさんのアイデアや歴史などを

 どこかに残しておきたかったんです。


 そして、この美術館という形で、

 みなさんのことをより多くの人に知ってもらおうと思ったのです」


「そんな……」


「ユーザー主体の美術館を作るにあたって、内部での反発はありました。

 自分たちが手綱を握らないで自由に作らせたらどうなるかを不安視する声も大きかったのです」


運営は美術館の方に手を伸ばした。


「それがどうでしょう。

 みなさんは展示する作品を選ぶにあたって、自分の作品を掲載することもなく

 本当に楽しんでもらえるような美術館づくりをしてくださいました。

 誰よりも読む人のことを考えられる人が利用していたと、心から嬉しく思います!」


「運営……!!」


みんなが涙を流していた。


「みなさん、これまでご利用ありがとうございました。

 こちらを利用してくださったみなさんのことは、この美術館で後世まで残ることでしょう」


みんなが別れを惜しむように感謝して拍手を送った。


これまでに過ごしたサイトでの日常。

評価やコメントで一喜一憂した日々。

寝る間も惜しんで応募したコンテスト。


何もかもが本当にいい思い出だったと涙した。









「なお、課金者限定のカクヨム(有)についてはサービスを継続します。


 無課金者のみなさんも、これを機会にどんどん入ってくださいね!!」f

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