朝チュン
朝チュンという言葉がある。
男女の一夜の逢瀬を暗喩するスラングで、映像作品などでよくある雀の鳴き声で目を覚ますと生々しい肉体が...という描写から来ている。
では実際雀の鳴き声が聴こえてきたらどうか。
それはただベランダや庭に雀が来ているのだろう。
僕が目を覚ましたのは平日も平日、水曜日の朝だった。
7時に起きる予定だったのにまだ6時半で、ふざけるなと思う。
しかし、直後その異変に気づく。
朝チュンは隣室の壁から明らかに聴こえて来ていたのだ。
ーーーーー
「絶対に内緒ですよ」
「はぁ」
眼の前には雀がいた。雀は鳥かごのなかにさも当然の様に留まっているがインコとは訳が違う。
「こういうのって鳥獣保護法?とかで駄目なんじゃないですか?」
「うーん。確かにそうなんですけど、でもこの子本当に死にそうだったんです。木の下に落とされてしまっていて。」
隣人はあっけらかんと答える。
「でも木下に落とされているのは案外親雀の教育のためみたいなこと聞いたことありますよ。」
「いえ、親雀は近くにはいなかったんです。」
彼女は大きくぶんぶんと手を振る。
「これ、内緒にしておいてください!お願いします!」
「…まぁいいですけど、いつか逃がすんですよね?そうじゃないと僕も毎日チュンチュンやられたら起きちゃいますし。」
「もちろんです!この子がちゃんと一人で飛べるようになったら逃しますよ!」
その時だった。
体に力が入らない。
チュンチュンという鳴き声だけが虚ろに頭の中に響く。意識は少し遠くなってきて、どうしようもなく思考が回らない。
そして股間が熱い。
「なんだか、暑くないですか」
やたら彼女がモジモジしている。体は妙にくねくね動いているし、頬は赤く染まっていた。
どうやらこの雀の声を聴くとやたらムラムラしてくるらしい。メカニズムはわからないが雀が「朝チュン」を告げるというわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます