SS集

沖伸橋

爆弾

新聞配達員が爆弾を運んでいる。

そんなことはみんな知っていることだ。


朝は5時くらいになる原付の音が聞こえてきて、誰かの家に止まる。そしてどうしようもなく、その家は爆発する。


祐介は布団をかぶるとその音を澄ますように聴いた。

エンジンの震えは羽毛で少し小さくなって耳まで届く。

ただその柔らかさの中には確実に牙があって、今にも自分を殺しに来ているように思える。



あ、止まった。

終わった、と思った。

死ぬんだな、俺。数秒後に新聞配達員の爆弾は起動して、自分の骨と肉を焼き尽くす。

跡形もなく柱はなくなり、あとは塵。


爆風が起こり、窓ガラスが割れた。布団が剥がされそうになるのを必死でしがみつく。

しかし火の手はない。なぜだ、これほどの爆風が起これば火力も相当のはずだ。


割れた窓の外を見る。

燃えていたのは向かいの家だった。

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