現在の選択 その2

「この国の王族には【剣堅杖情けんけんじょうじょうの士】と呼ばれる人々を集める義務があります。」


 けんけんじょうじょう?

 俺はいつでも片足で飛び跳ねるぜ!みたいな?


 ―それは、ケンケン上等、です。―


 なんか今コーラおいしいとか言いながら醤油飲んでる人の笑顔が浮かんだけど。

 わかりにくいボケを説明の強いツッコミでフォローしてくれる神様とかかな?


 ―それは、わたしです―


 わかったので話を進めて下さい。

 悪ふざけが過ぎると読者のみなさんに『いいぞ!もっとやれ!』と言われかねません。


「剣は剣士に限らず攻撃力を、堅は盾などの防御力、杖は魔法力、情は情報力、つまり斥候などの力をそれぞれ指しています。」


 おう、厨二病臭い制度ウホ。

 つまりは有用な人材を集めろって事かな?


「私は弓での攻撃力、狩人としての斥候力、そしてを使える魔法力の三力を満たす三士という扱いになるでしょう。」


 テミスさんは確かに多少早いし強いのかも知れないと思ってたけど、王族からスカウトか来るレベルなのか。

 俺はどうだろう……


 全てを吹き飛ばすパンチの攻撃力、全ての攻撃を打ち消すパンチの防御力、衝撃波を発するパンチの魔法力、全てをパンチで聞き出す情報力。


 全てパンチで解決ウホ!


「ストレージを使えるあなたも士に選ばれる可能性はあると思います。

 王族に仕えるのに不都合があるならば、力は隠しておいた方がいいでしょう。」


 あ、はい。そうですね。ストレージ異空間倉庫も魔法力でカウントしていいんですね。

 しかしこちらの都合にも気を配ってくれる、さすがテミスさんイケメン!抱いて!

 …正直仕えるのは無理だけど、別に強制されても逃げられるし関係無いんですけどね。こういうのは気持ちだから。うん。


 だから事務の女の子のご機嫌を取ろうと11月10日仕事帰りに数店舗回ってまで色々な種類のポoキーを買ってきたおじさんの事を嫌わないであげてください!

『ダイエット中だっつうの!』とか言いながらゴミ箱に投げ捨てないで下さい!ポッ〇ーに罪はありません!


「えっと……よくわかりませんが、つらい事でもあったんですか?」


 就職活動中の俺にそんな事あるわけ無いじゃないか。

 きっとどこかのおじさんのネガティブ妄想だよ。

(『2袋入ってるから、その味とこの味交換しません?』とかいった交流を夢見ていた〇ッキーは箱単位で配布され終了しました。

 ちなみにポッ〇ーを買いあさった事と≪箱単位で配布≫から先フィクションです。)



 そんな事を話してたらあっという間に村の入り口についた。

 入り口前で大人しく待ってる王族とかカワユスwwwって思ってたけど、ある意味期待を裏切らない結果になった。

 子豚のような王子らしき男と、そいつに胸を揉まれている村人らしき女性。

 ……女性は泣いていた。



 ギルティウホ!



「おうハニー!オークに襲われてるじゃないかっ!」


 この女性とは初対面です。村の入り口から村長宅に来る間にも見てません。

 軽く子豚のような王子を突き飛ばし、村人の女性を救出する俺。

 大丈夫、手加減の腕はぴか一だよ!


「ぷぎいいいいいぃぃぃぃぃ!貴様あぁぁぁぁぁ!!!」


 護衛に無事受け止められたのか、無傷で戻ってくる子豚のような王子。

 ほんのり光っているところを見ると、回復魔法で回復中なのかもしれない。


「おや、オークの子供、略してオー児おーじかと思ったら人でしたかハッハッハ」


 救出した女性を逃がしつつ、オー児の前に出て棒読みで笑う。

 これで俺の方にヘイトが向いたはず、脳みそ軽そうだから先ほどの女性もこれで大丈夫だろう。

 テミスさんがものすごい顔でこっちを見ているけど気にしてはいけない。

 某画太郎先生のクソして寝ろのような笑顔で返しておく。


「ヤクトっ!こいつを殺せ!」


 俺を指さして叫ぶオー児。

 その瞬間、さっきオー児をキャッチしたと思われる騎士がこっちに向かって突っ込んで来た。

 その速度は身体強化を使っているのだろう、人が出せる速度には思えない。

 これがケンケン搭乗ウッシッシの力か!

 あれ?チキ〇キマシン関係ねーな、なんだったっけ?


「死n(ぱぎょっ)」


 あれか、この世界も悪人が人を殺そうとする時に「死ねぇ!」とか叫ぶのか。

 カウンターのタイミングを教える便利仕様なのかな?

 またもや手加減して突き飛ばすが、今度は受け止めてくれる人はいない。

 だって本人が飛んでるんだものプギャー!


「お、落ち着いてください!こ、この人は旅の人でこの村とは関係ありません!

 ストレージに塩持ってるって言ってたから譲ってもらおうとしただけです!!」


 速攻人を切り捨てるテミスさん。

 まあ王族相手に喧嘩売っちゃってるんだからしょうがないけどね。

 しかしヤクトとやらが一瞬でやられたせいか、少しおびえた様子のオー児。

 無事自体は落ち着いて話を聞く流れとなりました。


「無事じゃないからな!」


 そう言えばさっきから心の声に突っ込まないでくださいテミスさん。

 メタネタとかギャグキャラへの道確定ですよ?



 とりあえず後ろに下がり、オー児が村長とテミスさんと話しているのを大人しく聞くことにする。


「……と、とにかくだ。

 今回はテミス、貴様を俺様の【剣堅杖情の士】の一人として迎えに来た。

 王族である俺様が直々にやって来たのだ、よもや断るとは言わせんぞ?」


 もはや半分拉致のような熱烈スカウト。

 せめて他の王族含めたドラフト会議は無いのでしょうか。


「し、しかし!テミスがいないとこの村の防衛は無理です!」


 テミスさんワンオペでこの村守ってたのか。マジ勇者。

 むしろ税金払ってるなら領主の兵とかが守ってやれよと思うんですがそれは。


「ではそこの男を奴隷として俺に寄越よこせ。

 王族に手をあげたのだ、本来火あぶりかギロチンかという所を生かしてやるんだから有り難く思え!」


 何その二択。市中引き回しとか腹切りとか銃殺とか絞首刑とか色々あるだろ!

 あ、銃無かったな。じゃあ魔法でいいや。


「なんで処刑方法にこだわってんですか!」


 いや、だからテミスさん……心の声にツッコミだしたらもう爆発してもアフロになるだけで死ななくなっちゃうよ?


「テミス……貴様が俺と共に来るのか、そいつを奴隷にして俺に渡すのか。

 どちらを選んでも構わんし、両方でもいいぞ?」


 さすが王族、ある意味交渉には慣れているのかもしれない。

 最初に二つの選択肢を提示し、どちらかを選ばせる。

 そうすると相手はその二つの選択肢から選ぼうと必死になって、他の方法などは頭に浮かばなくなってしまうという心理テクニックがあると聞いた覚えがある。

 王族に伝わる教育なのか、この世界では結構普遍的な知識なのか……


「テミスさんテミスさん、悩まなくとも選択肢は別にその二つじゃあありませんぜ。」


 足を踏み鳴らす俺。

 急に出来た落とし穴に落ちるオー児と騎士の皆さん。

 タイミングを合わせて手を叩く俺。

 丁度それぞれ首が地面の位置になるタイミングで穴がふさがり、体だけが綺麗に埋まってしまう皆さん。


「選択肢その三、このまま髭を剃るように首を狩る。剃り残しには注意だぞ☆

 選択肢その四、もう一度穴を広げて見えなくなるまで埋めて、オー児が来なかったという事にする。誰も見てない。誰も知らない。」


 ほら、選択肢は無限大!

 みんなが幸せになる選択肢もあるんだ!(オー児は除く)


 いや、決しておっぱい揉んでたのがウラヤマけしからんとかいうおっぱい理由じゃないよ。

 女性を泣かせたらおっぱいいけないおっぱいからねおっぱいおっぱい。


「ハァ…ハァ……ど、どう言う状況なんじゃ?コレ……」


 今来たのかよ、村長足おっそいな。

 追い付いたら王族と護衛の騎士達が地面に頭だけ出して埋まってるんだもんね。意味不明だよね。

 ゴブリン収穫レベルで意味不明だよね。


「と、とりあえず言いたい事はわかった。お互いに冷静になって話し合おうじゃないか。」


 さっきまでとは打って変わって大人しくなったオー児。

 危ないお薬でも打って変わってしまったんだろうか。

 でも村長にすら無抵抗に殺されるしかないレベルで追い詰められてるんだから、ある意味図太いよね。うん。



 …さあ、どう決着つけようか(完全にノープランでした。)

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