閑話17 勇者大家族

 僕が異世界から戻ってきた翌日。

 朝、家を出ると黒服の人達に囲まれていた。

 即座に臨戦態勢に入ると、黒服の中の1人が1歩前に出た。


「我々は内閣魔力資源調査室の者です。

 ここにあなたの魔力反応を感知してやって来ました。」


 大人しくついて行くことにし、車の中で話を聞いた。

 この世界には実は魔力がある事。

 現在魔王の封印に全ての魔力を集めているため、今は誰も魔法を使えない事。

 昔の陰陽師とか魔女は本物だった事。

 自力で魔力を生み出せる存在が、封印研究の代表者である老人しかいない事。

 そんな時に急に感知した僕を次の世代として教育したい事。


 お兄さんがいれば、全部解決じゃないのかな?


 昨夜結界に急な攻撃があったため魔物が沸き出しており、闘えるならその始末もお願いしたいこと。


 ……お兄さんがいれば、全部解決じゃないのかな?



 そうして移動すること5日、連れてこられたのは帯平洋のど真ん中。

 モー大陸って本当にあったんだ!


「君にはこれからに所属して貰う。

 活躍を祈るよ。」


 連れてきた人と握手を交わし、基地へと向かう。

 なんで中まで案内してくれないんだろう?

 そう思っていると、中から出迎えの人がやって来た。


 なんか一緒に出て来た人、お兄さんみたいな後ろ姿だった気がするけど、きっと気のせいだよね?


 基地の中庭には既に兵士みたいな人が集まっていた。

 ……あれ?女性しかいないの?



「早速だが打ち合わせを始めよう。

 これから魔物を駆除するのだが、君は遊撃を頼みたい。」


「はい、わかりました。

 いきなり入って連携も無いですもんね。」


 隊長らしき女性が言うことに異論は無い。

 僕も1人で闘えるだろうし。

 あ、お兄さんに武器渡してたんだった…


 そんな心配をしながらも、支給品の武器がそこそこ優秀みたいで安心する。

 現代化学のおかげだね。うん。



 もう何度も繰り返している駆除活動。

 油断しなければ生き残れるって言ってたけど……


 ピンチに陥った部隊の援護をしたり、退却のしんがりをやったり、遊撃ながらそこそこ活躍してたんじゃないかな?


 そんな時に、急に結界が砕け散った。

 お兄さんの気配を感じる。


 ……やっぱりお兄さんが解決するんだね。


 ヴァルキューレの隊長に、あれは知り合いだという事、最強だから巻き添えを食らわないよう退却した方がいいと伝えた。



 一緒に戦ったみんなはとても魅力的で。

 きらめく汗、引き締まった肢体。

 基地に帰った後の記憶は無かった。




 後の世に、魔法を使うのが上手い一族が現れた。

 1度失われたはずの魔法技術を使いこなすその一族は、現代社会で各国の軍事重要ポストに納まっている。


 各国から集められた、魔王の封印を護っていたヴァルキューレ出身の女性達。

 その子孫と言われる一族だが、父親は不明だった。

 集合写真にさえも男性は映っておらず、5日間だけ基地にいた男性が父親だと推測されている。


 その名を、ゴリラチルドレンと――



「俺は無実だーーー!」

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