第103話 最後に
俺は基地を出発すると、さっそく結界を殴ってみた。
ガラスのように砕け散る結界、中からあふれ出る力の波。
中にいるのが神か魔王かはわからないが、何かがいるのは間違いないようだ。
まあ多分俺より弱いけど。
そのまま封印施設の中に入ると、研究者たちが待ち構えていた。
「お前が封印を壊したのか!
これでは魔王が世界を滅ぼしてしまうじゃないか!」
いや、魔王が壊せなかった封印を力づくで破壊した時点で、勝てるかもとか思わないんだろうか。
研究者たちが騒ぐが、全部シカトして中へと進んでいく。
魔王の気配を確かに感じる。
この先にいるのは確かなようだ。
「よく結界を壊してくれた。
お前の行動はこの世界の受難となるであろう。
これからどうなるか、今見なさい。」
そう言ったのは研究者の責任者と思われる老人だった。
たどり着いた広間にはガラスで出来たタンクのようなものが割れており、床に中に入っていたと思われる液体のような物が広がっていた。
おそらくはタンクの中にでもいたのだろうか、ずぶぬれの女性が床に倒れている。
「そうか、あんたが魔王だったんだな。」
伏線とかロクに無かったのに、想定を裏切るような流れに困惑してしまう。
封印されていたのは神で、封印していたのが魔王。
つまりはそういう事だった。
おそらくは横でうずくまっているのが神とやらなのだろう。
「ワシはただ神を封印していたわけではない。
その間ずっと神の力を奪い続けていたのだ。
その身に感じるがよい!本当の絶望を!!!」
両手を広げて叫ぶ老人。
いや、老人だったナニカ。
両手両足の筋肉が膨れ上がり、紫色へと変色していく。
身長も膨れ上がるように伸びていき、頭には真っ赤な髪が天を突くように伸びていく。
口からは牙が生え、爪は鋭く伸びていく。
「見よ!この素晴らしい力を!
もう神はいないのだ!この私こそがこの世界を支配するのだよ!」
そうだね、もう髪はいないよね。
髪の毛を掴んで振り回し、15回ぐらい魔王を床にたたきつけたらやっとむしれた。
さすが神の力を奪った魔王!毛根も強いね!
「な、何者だ貴様!このワシにダメージを与えるなど、人間に出来るわけが無い!」
あっはっは、それくらいのパワーアップで最強気取り?
「俺か?俺は脳筋に憧れるただのゴリラ志望の男だよ。」
むしり取った髪をパラパラと落としながら、魔王へと一歩一歩近づいていく。
俺は今どんな表情をしているのだろうか。
嬉しそうな顔?めんどくさそうな顔?それとも怒っているような顔?
「そんなスケベ丸出しの顔で近づくな!
ワシこそがこの世界を──」
女性の服が濡れて張り付いているからね。しょうがないよね。
スタイルいいしね。しょうがないよね。
年頃だからね。しょうがないよね。
そんなしょうがない俺を貶めようとした魔王の頭は既にデコピンで吹き飛んでいる。
しかしどうやら死んでいないようだ。
「頭を吹き飛ばしたぐらいでこのワシが死ぬと──」
首から頭が生えてきたかと思えば、何やら強がりを言っているようだったので、もう一度デコピンで吹き飛ばしておいた。
「何度やっても無駄だ、頭を吹き飛ばされたくらいでワシは──」
ドッパン
「いい加減にしないか、話が進まな──」
ドッパン
ドッパンドッパンドッパンドッパン
ドッパンドッパンドッパンドッパンドッパンドッパンドッパンドッパン
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