第98話 沸くな
声をかけてきたのは銃を構えた女性。
周囲には他に3人の女性がいる。
なんで女性ばっかり?と疑問を抱くが、こっちに向いた銃口から警戒されているのが分かる。
「私たちは結界守護第1部隊、ヴァルキューレ所属第3小隊です。
ジークフリートの装備では無いようですが、あなたの所属と氏名を述べよ!」
あ、結界護る側の人達なんですね。
じゃあとりあえず敵じゃないのか。
「こっちはさっきあんたたちの仲間っぽい黒ずくめに話を聞いて来たフリーの傭兵みたいなもんだ。
魔物が沸いてると聞いてやってきたんだが、他にはどこにいる?」
俺がそう返すと、ヴァルキューレの人達は戸惑いつつも助けられた事で少しは信用しているのだろう。
警戒は解かないまでも、魔物がいる方向を指さして答えてくれた。
「D-3地点……じゃ通じないわね、あっちの方角3kmに3体、あっちの方角に12㎞に3体いるようよ。」
そう女性が答えた瞬間、封印がある方向から魔物が追加で2体出てきた。
「増えるなザコが。」
出てきた瞬間即殴り殺すと、先ほど教えてもらった方へ高速移動を始める。
残されたヴァルキューレの隊員は、あっけにとられたまま見送ったのだった。
「…小隊長、あれは味方なのでしょうか。」
「わからないわ、ファウストのようにならなければいいのだけど。」
「早く結界を取り戻せ!中にはまだ博士たちがいるんだぞ!!」
今度は男たちが戦っていた。
さっき話に出たジークフリートの人達だろうか。
通り過ぎるついでに魔物をぶちのめしていく。
そのままぐるりと結界を1周するように一蹴すると、ひとまず戦闘音が鳴りやんだ。
「お、お帰りなさい……」
またもや開いた口がふさがらない様子のヴァルキューレの皆さん。
あれだね、こんな状況だけど女性にお帰りなさいって言われるのは結構来るものがあるね。
「た、ただいま。」
おそらく俺の顔は赤くなっているのかも知れない。
今思い返せば、まともな女性に優しくされるのはいつぶりだろうか。
基本勇者を狙う貴族のお嬢様ばっかりだったし。
後はロリコン認定待ったなしの幼女や、弟子として接した修道女。
男装の麗人に痛い二つ名で呼ぶ貴族のお嬢様たち。
えーっと、他にいたっけな?化け物とか?
そんな照れてる俺を見て、ヴァルキューレの1人がクスリと笑った。
「…悪い人じゃなさそうね。
状況説明の必要もありますし、お礼もかねて拠点に案内するわ。」
え?ヴァルキューレの方々の拠点?
名前からして女性部隊じゃないの?いいの?男が行っても?
そんな俺を見て、何を考えているのかバレバレだったのだろう。
「もちろん区画は分かれてるけど、拠点にはジークフリート部隊もいるからね。」
あ、そりゃそうですよね。はい。
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