第96話 ちょい殺す気

 あ、こいつら倒せばお金手に入るかな?


 ……もはや異世界転移病かもしれない。

 俺のいた日本なら確実にやらない事が、当たり前のように選択肢として候補に上がる。

 以前にも思ったけど、順調に悪化しているようです。

 コンチクショウ。


 はあるし、文明の発展度合いも俺のいた日本とそっくりだけど。

 この世界にはとか無いし。

 異世界ってフィルターで暴力的になれるのってちょっとだけ怖いよね。気を付けよう。


 うん、全ては魔王が悪いという事で。


 俺がやる気になったのに気付いたのか、警戒を更に高める黒ずくめ達。

 しかしその時、既に1人倒れていた。

 行って、届いたら、素早く、殴る。

 Go Reach Rapidly Attackアタック

 そうだね!基本だね!


 その早さを見た黒ずくめは即座に逃げようとするが、地面を蹴ろうとした瞬間、土魔法で足首から下を埋めて固定。


「大丈夫だよ。殺してないから。

 さっきのは気絶してるだけ、…なんちゃって。」


 少し緊張をほぐそうと、軽く冗談を交ぜてみる。

 命を握られた状態で緊張がほぐれるのかと言われたら、普通はあり得ないけど。


「マスク効果で美人に見えるけど、そいつの鼻と口元まで見たら美女とはほど遠いぞ?」


 ガッカリ情報ありがとう。

 その情報は正直いらなかったよ。うん。

 ほら、もう1人の女性に超にらまれてるよ。



 ……まあ次の瞬間には全員気絶するんですけどね。



 気絶させた人達の体をまさぐりながら、持ってる物を抜き取って行く。

 うへへ……役得役得。

 ほら、胸の谷間に凶器とかあるかも知れないからね。

 しょうがないよね。うん。



 ……胸の谷間に通信機があった。



 耳にイヤホンマイクは付いてたけど、本体こんな所にあったのか。

 これ以上はさすがに気が引けるから、首から下を埋めて自白して貰おう。


 魔法も使っちゃったけど驚いてなかったみたいだし、この人達の組織には魔法使いもいるんだろうか。


 そんな事を考えていると、先に目を覚ました1人が感ただよう顔でこちらを見ていた。

 最初に気絶したマスク美女だ。

 マスクはチェックしたあと元に戻してある。

 ……マスク美女だからね。


「何でここ襲いに来たの?

 ぱっと見普通のキャンパーにしか見えないと思うんだけど。」


「……魔王の手先に話すことなど無い。」


 衝撃的発言!

 どうみても完全に誤解です。本当にありがとうございました。



「え?魔王の手先?なんで?

 さっき手っ取り早く魔王倒そうとしたのが原因?」


「は?魔王を倒す?

 先程の攻撃は封印施設を狙った物では無かったのか?」


 隣のオッサンも気付いていたのか知らないけど、話に入ってきた。

 どうやら事情が剣と魔法の異世界とは違うらしい。

 現代ファンタジーってめんどくさいウホ。

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