閑話16 ゴリラと勇者と残されたパーティー
僕のいた世界に戻ってきた。
お兄ちゃんと一緒に戻ってきた。
女神様に説教していたお兄ちゃんは、どうやら異世界転移に慣れていたらしい。
もう20回以上転移しているとか。
元の世界に帰ってきた後も色々と苦労していたらしく、僕に色々とアドバイスをしてくれた。
「帰還の魔法陣をいじって、向こうの世界に転移した1時間後に戻ってきてる。
ギリギリを狙うと存在がダブってしまう可能性があるから許容してくれ。」
どうやら異世界で過ごした3年間、行方不明とかにならなくて済みそうだ。
さすがお兄ちゃん、伊達に何度も異世界転移してない。
「んでこっちが見た目を3年若返らせる指輪。
身に着けると消えて見えなくなるおまけつきだから、校則とか気にしなくていいぞ。
昔作ったんだけど、時期の変更が後から出来なくてな……
1度だけならいいけど、何度も転移する俺向きじゃ無かったんだ。」
「あ…ありがとうございます。」
僕はもらった指輪をサイズが合いそうな左手の薬指にはめた。
まるで吸い付くようにぴったりだったけど、なんでサイズ知ってたんだろう?
「なぜその指にはめたし。」
どうやらサイズは自動調整だったらしい。
別に小指でも足の指でもちょうどいいとの事。
まあいいか。お兄ちゃんと連絡先を交換して、ひとまず家に帰ろう。
持ってるだけで捕まりそうな剣とか武器防具はお兄ちゃんが引き取ってくれた。
代わりに金塊をもらっちゃったけど、コレ換金できるのかなぁ……?
電車が同じなので、お兄ちゃんと一緒に駅に向かう事にした。
駅に向かう途中から、お兄ちゃんが先に降りるまで色々なアドバイスをしてくれた。
異世界の魔力が体に残ってるうちは魔法が使える事、自分で魔力を練る事が出来るようになっていればこっちでも魔法が使える事。
力はそのままなので、制御に困ったら弱体化の魔道具を使う事。
向こうで手に入れた力を悪い事に使わない事。
他にも細かい事までたくさん話をした。
そしてまた会おうと電車を降りたお兄ちゃん。
お兄ちゃんが見えなくなった頃、本当に異世界にいたのは現実だったのかなと。
急に夢だったんじゃないかという思いが浮かんできた。
でも、あれは。
みんなと一緒に乗り越えた試練はきっと現実だったんだ。
最後はお兄ちゃんが全部片づけちゃったけどね。
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「行っちゃったね。」
「急すぎるだろうが……20歳になったら一緒に飲むって約束したのによぉ……」
「もう少しって言ってたのに残念でしたね。」
「まさか師匠まで勇者だったなんて……」
魔王城に取り残された4人は、皇太子が師匠と呼ぶ男の残したテントセットで夜営をしていた。
勇者の事はもちろん、あの男の事から皇太子が今のように強くなるまで。
4人はこの時語った思い出話を本にし、新たな勇者物語として世に残す事にした。
そして、最後に勇者を助けた1人の男の話も。
それは唐突に苦難を解決させる、強引なハッピーエンド物語に使われる手法として広まった。
ギャグマンガでいう夢オチのような物だ。
優しいけど馬鹿げた終わり方として。
のちに広まる手法、ゴリラオチの誕生である。
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