第91話 ドラミング

 上司冷たくなってそっぽ向かれたり

 なんでなんでなんで?

 ゴリラ、いい人だけど間が悪いとね

 バシンと逝ったりね



 ……いや、殴ってないよ?


 あの後普通の手続きで街に入ろうとして、本物のクレアだと発覚。

 夜に入れなかった事を知った衛兵長がジャンピング土下座。


「いえ、街の決まりを守ったのですから、そこを責めないであげて下さい。

 ………まあ、品が無いと言われたのは侮辱罪で打ち首になるかもしれませんが。」


 このクレア様こえええええええええええ

 超根に持ってるうううううううううううう!

 あっちのクレアたんの方が良かったあああああ!!


「何か言いましたか?」


 のー!まむ!


 俺は考えるのをやめた。




「と言うわけで、こちらの方に助けていただいて戻ってまいりました。

 これからまたしばらく身を隠そうと思います。」



 気付いたら謁見の間的な場所で、いかにも皇帝ですって感じの人の前でぼーっと突っ立っていた。

 今更だけど、これひざまずいた方がいいのかな?


 まあいいや。うん。

 とりあえず割って入らないとダメなんだった。


「いや、だから兄貴治せばいいじゃん。」


「えっ?」

「えっ?」

「はっ?」

「ほっ?」


 いや、いつまで続くんだよコレ。


「だから、お兄さんを治療して、ちゃんと後を継げるようになれば問題ない。

 そういう簡単な話でしょ?」


 単純な話なんだよね。

 兄貴が病弱な状態だからもめるわけであって、元気なら問題ないじゃないか。


「いや、それが出来ればこんなややこしい話にはなっておらんのだが。」


 皇帝ことクレアパパが『何言ってんだこのバカ』って目で見てくる。


「とりあえずダメで元々って事で連れて行ってくれない?

 別に無理でも今と変わらないし、試さない理由は無いでしょ?」


 ゴリ押しでお兄さんの所まで連れて行ってもらう。

 正直呪いだろうが病気だろうが怪我だろうが治せない事は無いはずだ。

 やり過ぎて不老不死にしないか心配なぐらいである。


 そうして皇太子の所へ連れてこられた訳だが。

 窓はカーテンで覆ってあり、辛気臭い空気が漂っている。

 とりあえずカーテンを開けて明りを……入ってこないな。

 呪いの疑いもあるんだったら軟禁じみた状態になるのもしょうがないのかな?

 まあ俺には関係ない。魔法の光を浮かべると、皇太子の体の状態を調べてみる。


 なるほど、これは確かに厄介かもしれない。

 命を奪うわけでもない小さな呪いが、その分強烈にしがみついているようだ。

 きっと下半身が動かないのもこの呪いのせいだろう。



 まあ2秒で治せるけど。



 パッと俺の手が光ると、呪いは跡形もなく吹き飛んだ。

 完治して「た、立てる!」とか言っちゃって感動している皇太子。

 開いた口が塞がらないクレア様と皇帝を放置して、俺はこう続けたのだった。



「次はゴリーズブートキャンプだ!」

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