第90話 故意に押して

 マジ会いに行くどうしても、声が出せない視界が歪むの

 迷子のようにマジすくむ

 私をすぐに届けたいの?

 ハンドル回して崖越えた

 He is not a human uh... ゴリラ



「まさかあのまま海まで越えるとは思いませんでした……」


 若干グロッキーな感じでつぶやくクレア様。

 帝国の首都がもう目の前だ。

 さすがに近くまで行くと攻撃されかねないから、街の近くに来たあたりで降りて歩いている。


 本来船旅込みで2週間くらいかかる道のりを、2日目の夜は海上だったこともありそのまま3日で突っ走ってきた。

 もう夜なので街の外で1泊しようと思ったのだが……


「さすがに皇女が来たら、夜中でも街に入れますよ。」


 確かにそれもそうだ。

 権力のパワープレイが無理なら、普通に街壁を飛び越えるというゴリラプレイを考えていたが必要なさそうだ。


「そこで止まれ!

 この時間は誰も通すことは出来ぬ!」


 衛兵さんご苦労さまでーす。

 こちら第三皇女のクレア様になりまーす。


「クレア様がお前みたいな怪しい男と2人で旅するわけがない!

 そこの娘も確かに似ているが、皇女様としての品が足りぬわ!」


 品 が 足 り な い


 ヤバい。

 8歳の女の子を笑うのは、さすがにかわいそうだと思うけど、これは笑わざるを得ない。


「ウホホウホホウホホwwwwww」


「なにを突然奇声を上げてるのですか!

 おかげで偽物扱いではないですか!」


 いや、偽物扱いは笑う前なんですが……

 恥ずかしくて混乱してるのかな?

 まあしょうがないよね。まだ8歳だもんね。


「強引に突破するのと、今夜はここで1泊するのどっちがいい?

 どっちにしろこの衛兵さんはかわいそうな事になりそうだけど。」


 一応クレア様にどっちを選ぶか尋ねてみる。

 どっちにしろ衛兵さんはかわいそうな事になりそうだけど。

 大事な事なので2回言いました。


「そうですわね、ここで1泊しようかしら。

 今夜もあの快適な家を建てて下さるのでしょう?」


 物理的にじゃなくて、後から権力的に追い込む方向ですね。わかります。


「かしこまりましたー。それではどうぞー。」


 腕を振り上げた途端、せり出てくる建物。

 ……門から約5mの距離に。


「キサマそんな所に建物を……作った?うぇ?

 と、とにかくそんな場所にあると邪魔だ!とっとと片付けろ!」


 俺は大げさにため息をつき、手を広げてやれやれと首を振るとこう言った。


「ああクレア様、この衛兵はクレア様の寝所まで壊せと言っているようです。

 これはもうどうしようもありませんね。」


「わざとらしすぎますよ?

 もう少し離れたところに作り直して下さい。」


 流石にバレバレでしたね。スイマセン。



 そんなわけで門から15mの位置に作り直し、外で肉を焼いて食った。

 もちろん風魔法で匂いだけ門の方へ流すのは忘れなかった。

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