第88話 出る都会

 あーあーーハゲ死ねぇーーー

 埋めてコイツ埋めーーてーーー


 いきなり殺伐としてるけど、生ゴミはちゃんと埋めないとね。

 そんなわけで処理が終わったので、改めてクレア様に話しかけてみる。


「ゴミは片付けたぜ。ふっ……」


 最近グッダグダだったからね。

 この辺で格好つけないと、プライドが保てないから――


「ななな、何をやっているのですか!

 確かに片付けて欲しいとは思いましたけど!

 こんなゴミでもいないと派閥的に私の身の安全が!」


 あるぇ?

 先走っちゃった感じデスカ?

 で、でも脳筋だからね。しょうがないよね。


「ふむ、複雑な事情があるようだな。

 良ければこの私に……って、このしゃべり方じゃ中二病じゃないか。」


「ちゅうにびょう?」


 首を傾けて聞き返すクレア様はスルーで。可愛いけどスルーで。お兄ちゃんを許してくれ。


 ……あれ?デジャヴ?



「とにかく、どういう状況なのか詳しく教えてくれないかな?

 それなりに力になれると思うよ?」


「助けられたとはいえ、初対面の方にそう簡単に話せる内容ではありません。

 そもそも、平民に貴族や皇族の確執を話しても無駄ではないですか。」


 何このクレア様。

 8歳なのに大人みたいな事言ってる……


 はっ!?

 これひょっとして俺の方が頭悪い!?


「一応貴族とか相手に権力闘争とかしたことはあるよ。

 国から追い出されそうな女の子を玉座に押し込んだりした事もあるし。」


 お、俺も馬鹿じゃないんだぜ!……きっと。

 昔は勇者の肩書きがあったから闘えたってのは確かだけど、今はただの旅人である。

 しかし!自重をやめて力に訴える事にした俺には恐い物はない!

 その気になれば国と敵対すら出来るからね!


「女帝にはなりたくありませんので、必要ありません。

 しかし、ひとまず帝国に帰るまでその力で護ってはいただけませんか?

 護衛がいなくなったのはあなたのせいですし。」


 意外とちゃっかりしてるなこの子。

 まあどうせ帝国に行くつもりだったから、旅は道連れ世は情けってね。


「了解でーす。

 ひとまずは宿に案内してくれるかな。

 荷物も取ってこないとダメでしょ?」



「……軽いわね。馬鹿なのかしら?」



「ん?何か言った?

 早く行かないと荷物なくしちゃうよ。」


 いや、普通に聞こえてるんだけどね。

 さっきまでのていねいな態度は何だったんだろうか。実はこの子腹黒い?

 ……いや、確かに馬鹿かもしれないけどさ、ちゃんと大学合格したよ?


 なんだか納得できない感情をもてあましつつ、クレア様を急かして宿へと向かうのであった。

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