第84話 断固反教会

 槍を出されて回避、回避。

 みっつ並んで回避、回避。

 醤油かすめず回避、回避。


「いい加減にやめないか!」


 ヅカさんの叫び声でその場が固まった。

 ……一角ホエール、醤油で食うにはなんかちょっと違うな。


「彼はこの状況でも食べ続けるつわものだよ。

 そもそもこの距離でも、彼なら一瞬で我々の首をはねられるさ。」


 あきれ顔で続けるヅカさん。

 これ、甘めのニンニク醤油あたりがいけそうな気がする。


「一角ホエールを目にもとまらぬスピードで……

 いい加減食べるのやめない?」


 チューブニンニク買っといたっけ?と異空間倉庫を探していると、さすがにツッコミを入れられてしまった。


「あ、ごめんなさい。

 それよりほら、この九州醤油にニンニクとショウガを薬味で、馬刺しのタレ風だよ。」


 突き出されたまま止まっていた槍を潜り抜け、ヅカさんの隣へ移動。

 一角ホエールにニンニクショウガ九州醤油の組み合わせを試してもらう。


「あ、ホントだ。これいけるね。」

「あらあら、私もいただいて宜しいですか?」


「姫様!妃様!」


 当たり前のように食べるヅカさんとヅカさんのお母さん。

 ヅカさんはともかく、お母さんまで警戒せず食べるのか。

 どうでもいいけどキサキサマって噛みそう。


「彼は神みたいなものだから、気軽に大陸を吹き飛ばしちゃったりするんじゃないかな。」


「フハハハハハハハ……

 大陸など生ぬるい。この星ごと吹き飛ばしてやろうか!」


 ちょっと調子に乗って魔法を発動。

 幻影魔法で背中に純白の羽を3対6枚出し、浮遊魔法で浮きながら光魔法で後光を再現。


「……本当に神様だったのかい?」


 あ、ヅカさん信じた。

 とりあえずすぐに否定しておく。


「幻影魔法だよ。

 神様がどんな格好してるのかなんて知らないから適当にね。」


「神のお姿を知らぬなど、貴様はどこの田舎者だ……」


 ヅカパパのツッコミが入りました。

 さっきまで真っ赤だった顔も落ち着いて、今では普通に受け答え出来るようだ。

 まあそれでも出てくるのは皮肉なんだけどね。


 ……ん?この辺の土地では、神様が具体的な像か何かになってるのかな?

 悪乗りして神様のフリとかしちゃったけど、ちょっとマズい事したかな……


「いや、俺のいたところでは基本なんにでも神様が宿ってるって考えだったからね。

 何か宗教的なタブーがあれば先に教えてもらえると助かる。

 ついでにその神様のお姿とかも教えてもらえないだろうか?」


 マナーが迷子の食事もまだ途中だし、トラブルを避けるためにもお勉強しないとね。


「ふん、よかろう。

 熱心な信者になるまで説明してやろうじゃないか。」


 あ、やば、早まったかも。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る