第82話 さよなら姫様

 今日ゴリラが初めてナキクに着いたよ。

(ついたよー!)


 誰だ今のおにぎり好きそうな格好の人!


 茶番はともかく、無事にナキクまでたどり着きました。

 力を隠すのをやめた俺と、何も聞いてこなくなった姫様達。

 途中の魔物も視界に入る前から殲滅され、盗賊は出て来る前から縛られて、どちらも俺に引きずられている。


 なんのトラブルも無かったな!


「今までの非常識な強さが、本気じゃなかったとは思わなかったよ。」


「閃光なんて言葉じゃ足りませんでしたわ……」


 ヅカさん達の話しは聞かなかったことにしよう。うん。


「じゃあ街に着いたことだし、俺はここまでかな?」


 門番はヅカさんの顔でスルー。

 街の中に入った俺は、城に向かう途中の道のりで離脱を提案してみる。

 もうね、ヅカさん達にはバレてるけど、普通の旅人に戻りたいのですよ。


「一角ホエールはどうするんだい?

 お礼もまだだし、城の調理人に料理させてもいいけど。」


 忘れてた。

 元は一角ホエールを食べるために来たんだった。

 自由になるのは少し先に伸びそうだけど、せっかくだから料理してもらおう。


「忘れてた、まだ解体もしてないんだけど、どこか出来る場所ある?

 ついでに料理までお願いするよ。」


 ヅカさんにお願いした俺は、そのまま城までついていく事にした。

 まあ城まで行っても、変な権力争いに巻き込まれたりはしないよね。

 俺を囲おうとするとどうなるかはヅカさんも分かっただろうし。


 城の門番もヅカさんの顔パスでスルー。

 なんかここまでスルスルと入っていけるのはこの世界で初めてじゃなかろうか。

 とにかく城の中に……入らないの?


「ひとまず一角ホエールを解体できる場所に連れて行くから、そこで出してくれないかな?」


 とりあえず城の横手から回り込んでいくと、床が石で出来た広場に連れてこられた。

 なるほど、ここなら血で汚れても水で流せるだろうし、元々解体する場所なのかもしれない。

 一角ホエール料理が名物になるぐらいだし、城の横に解体場があってもおかしくは無いのか…な?


「本来は港の方に解体場があるんだけど、ここは毎年最初にとれた一角ホエールを解体する場所なんだ。

 特にその時しか使っちゃいけないってわけじゃないから、ここに出してもらえれば解体しておくよ。

 今晩の食事までには間に合うんじゃないかな?」


 おう、もう城内宿泊は確定なのか。

 まあ明日から街中の宿屋に移ればいいかな?


「では、わたくしはここでお別れですわ。

 領主様へのご挨拶の約束を申請したので、しばらくは街の宿屋におります。

 ご挨拶後はこの街から船で渡りますので、ご都合が宜しければ太陽の騎士様もご一緒出来れば幸いですわ。」


 襲われ姫はここでお別れなのか。

 まあ知り合いって言っても挨拶も無しに城に泊まるってわけにはいかないよね。


 ……太陽の騎士?

 なんかレベルアップしてない?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る