第79話 軌跡

 俺は一生懸命考えていた。

 この場を乗り切るとびっきりの噓を。


 噓を信じて貰うには、一部本当のことを混ぜるのが大事だ。

 本当の部分だけ証明すれば、全てが証明された本当のことのように勘違いする。


 ここで問題なのは何を本当のこととして喋るかだ。

 重要なのは調べればすぐわかることで噓は付かないこと。

 ギルドを潰したことはごまかせても、実際にギルドが潰れていることはごまかせない。

 そうやって取捨選択していけば、最低限喋らなきゃいけないことが解る。

 つまり、他を全て噓でごまかせば良いってことだ!


「こ、このグルメ旅行を脚色した、面白い旅日記を書こうと考えてたんだけど、どこから声に出てた?」


 まずは現在の状況の確認だ。

 ついでに発表予定の小説だからとか言って口止めすれば、不自然じゃないはず!


「え?最初からだよ?」


 終わってたーーーー!!

 え?噓の常識教えられたとか言ってたとこから?

 それもう異世界人ってバレてるじゃないかヤダーーー!


「噓はいけませんわ。

『そのあと捕まって剣刺して脱出して……

 あれ?街破壊率高くね?』から、『グルメ旅だって説明したんだっけ。』

 までですわ。」


 襲われ姫ありがとう!

 なぜか最初の一言が胸に刺さるけど!

 とにかくありがとう!まだごまかせる!!


「ちぇっ……面白そうなことになりそうだったのに。」


 ヅカあああああ!

 面白がってるんじゃねーよ!!!

 心の中は大絶叫だが、顔だけは冷静を装って頭の中では素数を――

 ……数えようとしたけど、またソースを数えそうだったから別の方法、えーっと、深呼吸?


 ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー


 ってラマーズ法じゃねぇよ!


「明らかに怪しいよね。危険な感じはしないから良いんだけど。」


「そもそも害する気なら2度も助けたりしませんもの。」


 なんだか無駄な信頼が逆に心に痛い。


「ほ、ほら。1回目助けた先の街で、領主の館に巨大な剣が刺さってたでしょ?

 アレを食べ物を粗末にされた俺がやった事にして、グルメ好きのキャラを濃くしようと思って。

 ただ、他の街でも燃やされたギルドとかがあったから、全部俺がやった事にすると、やたらと街を壊す暴れん坊っぽいかなって。」


 上手く噓がつけたんじゃね?

 これ、今後も事実を元にした小説って設定で使えるんじゃなかろうか。


「ヒャッハー達だけじゃなく、ナンパ師まで全員ボコボコにした君が言うと、全部本当に君がやったと信じてしまいそうだ。」


 あぶねえーーー!

 ヅカさんするどぉーい!

 事実、全部本当に俺がやってるウホ!


「……本当に君じゃないんだよね?」


 あぶねえーーー!

 ヅカさんするどぉーい!

 マジヤバいウホ!

 そんな都合良く記憶操作の出来る魔法なんて無いよ?


「や、やだなあ!

 そそそそんなわけないじゃねいか!」



 あ、これダメかも。

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