第78話 オレセツ

 ここで現実逃避、もとい設定を再確認しておこう。

 まず今回の世界に来てすぐに嘘の常識を教えられ、商人に騙された。


 ……思い出したらムカついてきた。

 1か月ほど耳からドリアンのにおいがする呪いをかけてやる。

 ハエが中に入って『ガサガサするー!』って言い続けてしまえ!


 幼女に助けられたのは忘れない。幼女はまさに女神!

 ……幼女趣味団ってのもいたな。気を付けよう。


 そしてギルドに登録……できずに街を出たんだったね。

 やらかしたことは反省していない。

 あのカイゼルハゲ元気かな?


 そしてそこでこのお姫様を助けたわけだ。


「さあ閃光の騎士様!行きましょう!」


 なぜかヅカさんの馬車に一緒に乗っているお姫様。

 襲われ姫と心の中で呼ぶことにしよう。


「閃光の騎士様、はやく馬車動かしてくれない?」


 くっそヅカさん絶対笑ってやがる!

 言い方が『閃光の騎士様』じゃなくて『閃光の騎士様(笑)』じゃないかこんちくしょう!


 ヅカさんに弱みを握られたであろう現実に目をそらしつつ、考え事を続けながら馬車を進めていく。


 最初の都で埋めたりむしったり色々暴れたけど、襲われ姫の態度から見てその事は知らないと思われる。

 けっこう進んだ先で襲われてたしね。

 そのあとダンジョンでアリ退治して、村でゴブリン畑作って、盗賊大量虐殺して──


 ……ってあの盗賊の狙い、ひょっとしてこの襲われ姫じゃないよね?

 流石にあの量は襲われ過ぎにも程があるんですけど。

 ……絶対厄介ごとに関わってるねコレ。あまり深くは考えないようにしよう。うん。


「そのあと捕まって剣刺して脱出して……

 あれ?街破壊率高くね?

 えっと、その後駐屯地でオッサンズに出会って、ギルドぶっ潰して……

 この時は旅の職人って設定だったよね。」


「そのあと次の街でゴブリン虐殺して、宝石を売るつもりだったけど領主からもらったお金でなんとかなって……

 そこで市場行って孤児院行ってヅカさんに会ってグルメ旅だって説明したんだっけ。」


「……旅の職人って設定ってなんだ設定って。

 捕まってとかギルドぶっ潰してとか君は何をやっているんだ……」


 あれ?

 心の声……じゃなくなってる!?


「閃光の騎士様がやったのですから、きっと事情があるのでしょう。

 わ、私は信じてますわ!……多分。」



 や ら か し た



 と、途中から声に出てた?え?どこから?

 最近思考が漏れてる気がするんだけど、脳筋になろうと思っている副作用だろうか。

 ……どうしよう、ちゃんと説明しないといけないパターンじゃないか。


 こうして、2人の姫たちにどう説明するかで頭を悩ませる俺であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る