第77話 明日は会えるさ

 今までも良くあった、通った道で盗賊に襲われる女の子。

 毎回助けはするのだけど、そのあと実は貴族でした王族でしたとトラブルに巻き込まれるわけで……

 今回も正直何かに巻き込まれるだろコレ、と思っているわけで。


 何を言いたいのかというと、関わらずに先に行きたいって事です。


「見たところ護衛の方も負傷している様子、このまま行くのは危険かと存じます。

 幸い目的地はナキクの先との事、せめてナキクまでは同行いたしませんか?」


 やめてヅカさん!フラグを立てないで!!

 絶対何か面倒ごとに巻き込まれるパターンじゃないか!!!


「しかし、そう甘えるわけにもいきません。

 幸い護衛もまだ戦え──」


 そうだよね、貴族同士で借りを作ると後が面倒だもんね。

 護衛も怪我してたら大変だからね、俺が治療しとくから巻き込まないでね。


 そう思いながら、怪我していた護衛を片っ端から癒していく。

 切られて流血していた護衛達の傷だけでなく、割れていた鎧や兜まで見る見るうちに修復されていく。

 よし、全部きれいになおった!これで護衛できるね!がんばって!


「……君は本当に人をびっくりさせるね。」


 ヅカさんがあきれ顔で俺を見ている。

 え?何か変な事しました?

 怪我だけじゃなく体力まで回復させた事が変だった?

 鎧兜まで修理しちゃったのが流石にまずかった?

 それとも左腕切り落とされていた護衛の腕くっつけた事?

 グーパーして驚いてるけど、片腕無くしたら護衛出来ないじゃん!


「ま、まさに神の御業!閃光の騎士様は神の使いだったのでしょうか!」


 やめてその二つ名、まるで頭が光ってるみたいじゃないか!

 は、はげてないよ!まだ見た目は20代だよ!?


「いえいえ、ただの食べるのが好きな旅人でございます。

 今は奇妙な縁でこちらのお方と道のりを共にさせていただいておりますが、そんな大した人物ではございません。」


「いや、君常識が狂ってるからね。高位の司祭でもないと腕くっつけたり出来ないからね。」


 常識を教えたあの貴族のせいかあああああああああああああ!!!

 ちくしょう!あの国でしか使えない高額の硬貨しか教えなかっただけでなく、そんなところにまでトラップがあああああ!!!

 何が『ちょっと怪我したら来る医者でも腕をくっつけたり出来る』だこの野郎!

 超いいやつ呼んでるんじゃねーか!

 擦り傷ぐらいツバつけとけこの野郎!唾液の殺菌作用なめんなこの野郎!!


 どうしよう、今更一般人の真似できないじゃないか。


 ……あれ?

 普通の旅の職人って設定はヅカさんと会った街の前で使ってたんだっけ?

 ヅカさんにはグルメ旅行者って設定だったよね?


 ……ぼ、ボロが出る前に気を付けないと!

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