閑話13 勇者と特訓
異世界に来てもう1年がたった。
[筋肉の宴]の人達は優しかったけど、このまま傭兵活動を続けていては魔王退治に行けない。
皆を巻き込むわけにはいかないからね。
……最近体を触られる事が妙に増えたし。
とにかく、僕は1人で旅に出る事にした。
一緒に魔王を倒してくれる人を探さないといけないしね。
傭兵団の皆と別れた街から南に進むと、大きな森があった。
動物の気配がほとんどしない森だ。
こんな森には大抵やっかいな魔物がいるって聞いたことがある。
油断せずに気を引き締めて進もう。
……無事港町につきました。
あれ?あの森ほとんど生き物がいなかったんだけど……
乱獲しすぎとかかな?
でも虫とかもいなかったし、いったい何があったんだろう。
途中にあった魔法陣の跡みたいなのが関係あるのかなあ……
とにかくついた港町では、市場がにぎわっていた。
人がうじゃうじゃといる中を、まるで障害物が無いかのようにすり抜けて買い物をする子供たち。
こ……この動きは!!
レベルアップにつながると確信した僕は、子供たちに話かける事にした。
……話しかけることにした。
………話しかけたいけど捕まえられない。
声を張り上げて何とか子供に話しかけると、仕事中だから後でと言われた。
しょうがないので、ついでに市場で魚を買おう。
……魚を……魚を………魚が買えないっ!?
そんな!あんな子供たちでも潜り抜けていたというのに!
おば様たちの圧に勝てないっ!
こ、こんなんじゃとてもじゃないけど魔王退治どころじゃないじゃないか!
これは本格的にあの子供たちに秘訣を教えてもらわないと!
しばらくチャレンジしたけど、結局魚の一匹も買えなかった僕は、市場の出口付近で子供たちを待っていた。
「あ、あの人かしら?」
「結構カッコいいわね、本当にナンパされたの?」
「本当よ!『君の事が知りたいんだ!』って言われたもの。」
声をかけた子供が友達らしき子を連れてやってきた。
……なにか勘違いされてないかな?
「幼女趣味団の生き残りかしら。」
「気を付けないと、お宅の娘さん9歳でしょ?」
絶対勘違いされてる!
って言うか幼女趣味団ってなんだよ!明らかに事案じゃないか!
お巡りさん!違います!
とりあえずさっき声をかけた子が女の子だったのには今気づきました。
早くて見えなかったし。うん。
「あ、あのね。お兄ちゃんは君たちが素早く動く秘訣みたいなのを知りたいんだ。
どうやって訓練したかとか、教えてくれた人の事を紹介して欲しいとか。」
必死になって言い訳をする僕。
女の子たちは『そんな言い訳しなくてもいいのよ?』と言わんばかりの表情である。
とにかく訓練した場所を教えてあげるって事だったので、手を引かれたままついていく事にした。
あの動きはすぐには身に着けられないと思うんだけど、そう簡単に教えていいのかな……
──到着したのは孤児院だった。
玄関先で服が破れてボロボロになった、半裸の男がある意味一番秘密にしなきゃいけないんじゃなかろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます