第72話 今日はルンルン、物がいい。

 ヅカさんと広場に到着しました。

 さっきまでむしってた髪の毛が異空間倉庫に一杯で気持ち悪い。


 昔は鍛冶の時に髪の毛を入れていたとか言う話もあるけど、アレは清らかな乙女とか限定だった気がする。

 まあ、実際は神秘性よりも製鉄時の炭素含有量に関係してくるとかそういう話なんだろうけど。


 とにかく広場で他の露店を見てみる。

 ミノタシチューの店主が声をかけてくるが無視だ無視。

 あんな殺人兵器を食わせやがって……


「返事ぐらいしてあげても……恨む気持ちはわからなくも無いけどさ。」


 ヅカさんうるさい。

 もうあんなものを人に食わせちゃダメなんだ。


 そんな場面もありつつも、色んな屋台や露店を見て回る。

 使い道のなさそうなお土産物を買いたくなるのは、男の子なら当然だよね!

 修学旅行の木刀とか木刀とか木刀とか。


 俺も中学の時は木刀買っちゃったしね。

 ……そのあとどこにやったっけ?玄関の傘立てに入ってた気がするけど……

 ま、まあそこまで含めてあるあるだよね!


「それで、キミはその変な熊の木彫りを買うつもりなのかい?」


 はっ!違う違う、俺はこれを見て北海道を思い出しただけなんだ。

 熊はさっき倒したマーダーベアーとやらだし、鮭じゃなくてゴブリンくわえてるけど。

 ……本当になんでこんな不気味なの売ってるんだ?


 店主に聞いてみると、ゴブリンに畑や家畜を荒らされないようにするお守りらしい。

 いや、マーダーベアーが近くにいる方がよっぽど危険じゃ無いの?


 ていねいに木彫りの熊を元の場所に戻すと、次の露店を見に行く事にする。

 そのままヅカさんと甘い物や串焼きやら食べたり、色んな露店を冷かしたりしていると、ちょっと変わった屋台のようなものがあった。

 どうやら見世物系もあるようだ。


「さあいらっしゃいいらっしゃい!このろうそくの火を消せたら金貨1枚!

 参加料は銀貨1枚だ!みんなやってみないか?どうだ!」


 ろうそくの火を消せたらとかずいぶん簡単なチャレンジだなと思っていたら、どうやら魔法で消えないようにしているらしい。

 横でそのろうそくを売っている商魂のたくましさは嫌いじゃないけどね。


「じゃあ俺が参加するよ!」


 そう言いながら銀貨を……銀貨を……


「すまない、銀貨を貸してくれ。」


 財布代わりの布袋には、金貨と銅貨しかなかった。

 どうかしてるぜ!


「なぜだか無性に殴りたくなったのだけど?」


 おっと、ヅカさんの機嫌を損ねるのはよろしくない。

 金貨でお釣りが出ないのか確かめよう。

 そう思って金貨を差し出すと、店主の男はいきなり大興奮で叫び出した。


「おっと!10倍チャレンジだ!

 コレをクリアできれば金貨10枚、しかし消さなければならないろうそくも10倍!

 さあ普通の攻略者も出ていないのに、果たして10倍チャレンジ成功なるか!?」



 …え!?ちょ、まって!

 この国のお金、10進法だったの!?

 って違う、それじゃない、かってに10倍にするな!

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