第71話 大量にはげろ

 トイレに閉じこもる事丸1日。

 ようやく俺はヅカさんの護衛を再開する事になった。


「あんなもの食べるから……」


 あの時のヅカさんの目は何か新しい事に目覚めそう……もとい、申し訳無い気持ちでいっぱいになった。


「昨日は申し訳なかった。今日はもう大丈夫だから、どこへでもお供するよ。」


 俺に付き合って昨日宿で過ごしたヅカさんに、今日は大丈夫だと伝えると宿から外へ出る事にした。


 前回の反省を生かしたのか、もう必要が無くなったからか、今日は街中で過ごすからか。

 今日のヅカさんは女性らしい恰好をしており、前のように男同士のカップルと間違えられる事は無かった。


 ……逆の意味で目立っている事には目をつぶろうじゃないか。


 ヅカさんは男装が似合う美人であり、町娘風の恰好をしていても違和感がバリバリなのである。

 まるで一流モデルが安っぽいワンピースを着ているようであり、完全に衣装が負けている状態だ。

 それで隣にいるのが冴えない男、つまり俺だった。


「おう兄ちゃん、いい女連れてるじゃねえか。」


 ですよねー!


 町娘風のボロいワンピースでも醸し出す貴族オーラに気づかないバカが声をかけてきた。


 も う め ん ど く さ い


「いい女連れてるからなんだ?俺から奪おうってつもりか?」


「だとしたらどうす──」ブチブチブチッ!


「さあ、行こうか。」


 手早く片付けてヅカさんをエスコートする俺。

 うーん、出来る男感が半端ないよね!異論は認めない!


「おう兄ちゃん、いい女連れてるじゃね──」ブチブチブチッ!


「どこか行きたいところはあるかい?」


 手早く片付けてヅカさんをエスコートする俺。

 うーん、出来る男感が半端ないよね!異論は認めない!


「おう兄ちゃん、いい女連れて──」ブチブチブチッ!


「そうだね、一昨日行った広場で屋台の残りを見て回ろうか。」


 既に異常な状況に対応するヅカさん。

 うーん、器の大きさが半端ないよね!異論は認めない!


「おう兄ちゃん、いい女──」ブチブチブチッ!


 確か一昨日行った広場はブチブチブチッ!こっちの方だったっけ?ブチブチブチッ!

 あのミノタシチュー食べてブチブチブチッ!そのまま宿に直帰したから……ブチブチブチッ!

 そう言えばあの先にもブチブチブチッ!果物とかおもちゃのような物とかブチブチブチッ!売ってた気がする。ブチブチブチッ!


 そして誰も近づかなくなったころ。

 通ってきた道沿いに点々と、大量のはげたチンピラが倒れていた。

 この事件以降、この街でハゲはチンピラだと疑われる事になる。

 ものすごい風評被害を生んでしまった。反省はしていない。


 ちゃんとフォローで、俺がむしったやつらは頭に【悪】って入れたからね!

 ふー!かっこいー!

 ……中二病的な意味でだけどな!

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