第66話 白い巨漢

 ゲームの必殺技もそろそろいいかなってところで、モヒカンは全滅した。


 そう、


 次に現れたのは上半身裸でズボンにサスペンダーのスキンヘッドデブ。

 ズシンズシンと人間ではありえないような音をたてながら


「でんめぇ~!オデの仲間をよぐもやっでぐれたなあ゛!」


 心くん、大きくなったね──。……って違う違う。

 流石に体重があるからか、移動はあまり早くないようだ。

 スタミナが無いのかスピードが無いのか判断付かないから、油断は決してしてはいけない。

 脂肪の鎧で攻撃が通じない可能性もあるしね。

 しかも、モヒカンほどじゃないが5~6人は見えている。

 せっかく手加減したのに、このままじゃモヒカンは心くんたちに踏みつぶされそうだ。

 流石に避けて歩く……と思うけど、あのアホみたいな顔見るとちょっと心配。


 さて、それじゃあモヒカン達が足元にいると邪魔だし攻めて行きましょうかね。

 今度は漫画とかの必殺技であの巨体に通用しそうな技かなあ……

 とりあえずはお約束だからこの技だよね。


 モヒカンの隙間をぬって先頭の心くんAの懐に潜り込み、蹴りをひたすら連打する。

 そして脂肪が蹴られ続け、横に流れて薄くなった所に秘孔を……


 ってダメじゃん!

 秘孔突いたら『ヒゲ部』とかそれに近い事言って死んでしまうじゃないか!

 とっさに蹴りを中断、バックステップで距離をとる。


「ぐへへ……オデの脂肪の鎧の前にはそんな攻撃無意味だで!」


 あ、勘違いしてやがる。

 俺は距離を維持しながら右手の肘と肩の関節を外すと、グルグルと右腕全体をひねり出した。

 高速回転が電気を生み出す、あの必殺技!【原〇力発電パンチ】だ!



 右腕から聞こえるブチブチと言う音。

 切れる筋繊維に血管、神経は圧迫されて激痛が走る。

 それ以前に左手でねじってあげないと、あんな自力じゃ腕ねじれない。

 そもそも腕ねじったぐらいで電気は発電できない!!!


「痛い痛い痛い痛い!いや、痛くないけど痛い!

 一定以上の痛みはカットされるけど、音だけでなんか痛い!」


「何やってんだおめぇ?オデが怖いから腕一本で見逃せって事だか?」


「何やってるのよ……。そんな事したら痛いに決まってるじゃない。」


 これには流石にヅカさんもあきれ顔である。

 アレか、あんまり調子に乗りすぎてたからか!

 こんなの再現した時点で右腕ボッロボロじゃねえか!


「くっ、しょうがない……妥協して魔法を使ってやろうじゃないか!

 くらえ!はら〇つとむはつでんぱーんち!」


 魔法の力で一瞬にして傷が治り関節もはまった右腕に、風の魔法の竜巻と雷をまとって殴りつける。

 電気の力で感電させれば一発だぜ!



 脂 肪 は 電 気 を 通 さ な い



 と言うか血管は電気流れるんじゃないのかよ!こいつホントに血流れてるの!?

 いや、まったく流れてないってわけじゃないんだけど、それ以前に脂肪が引っかかって体ごと回転してしまっている。


 ……もちろん俺の体が。



 いきなり再現に失敗してんじゃないか!!!

 どうしよう、せっかくのファンタジーなのに再現できないとか悔しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る