第67話 言う日がオデの掃除だで

「おめえ良くヒャッハーどもを倒せたな、そごのねえぢゃんがつよいのか?」


 何それ、ヒャッハーってモヒカンどもの正式名称なの?

 地味にバカにされている事よりも、そっちの方が気になるんですけど。


 もうやめやめ!

 漫画の再現はちょっと無理があったって事で。

 体を左右に動かしながらの連続フックとかも試そうと思ったけど、これ以上は囲まれてしまうからサクっと倒してしまおう。


 心くんAの懐に再び潜り込むと、そこそこの威力でアッパーを放つ。

 脂肪でかなりの衝撃が吸収されてしまうが関係ない。

 そのまま殴り飛ばすと、後ろの心くん達に衝突。

 ビリヤードのようにはじけ飛んでいった。


 ……周囲の家に激突しながら。


 やっべ、街が壊れ──てないな。

 脂肪がクッションになっているのだろう、特に家の壁が壊れるわけでもなく、弾んでいく。

 それを追いかけるように飛ぶと、頭を回し蹴りで蹴りぬく。

 その反動を使って次の心くんBへと向かうと、また回し蹴りで頭を蹴って方向転換。

 ピンボールのように蹴りながら全員回ると、1週する頃には全員が地に伏せていた。


 これでひとまず戦闘終了かな?


「最初から真面目に戦えばこんなに早いのに……」


 後ろでヅカさんが何か言っているけど聞こえない。

 聞こえないったら聞こえない。

 男の子にロマン要素は必要なのです。


「後でここの領主様に言い訳しておいてね。

 ただの冒険者だと、このまま捕まって終わりだろうけど、貴族の護衛ならおとがめなしに……なるのかな?」


「一応向こうから襲ってきたわけだけど、さすがにやり過ぎじゃないかなぁ……

 今まで襲われてきた事も返り討ちにした事もあったけど、こんな自警団まがいの連中じゃ無かったから……」


 明らかに向こうから襲ってきたわけだし、正当防衛で通用するよね?

 いや、ダメならダメで抵抗するけど、一応領主の娘のヅカさんに悪影響があると申し訳ないからね。


 そんな心配をしていると、馬の足音が聞こえてきた──


 その馬は馬車を引く馬とは明らかに違い、地面から頭まで3mはあろうかという巨体に漆黒の毛並み。

 草食動物にも関わらず、人を食い殺しかねない雰囲気を放っている。

 そしてまたがるのは皮鎧にマントを羽織った大男だった。


 ……そろそろ本気で怒られないかな、コレ。


 もうこの時点でダメな気がするけど、一応念のために話し合いで解決できないか試してみようかな?


「こちらの方はお忍びの貴族様でして、襲われたので返り討ちにしたのですが……」


 大男は数百人ぐらい殺していそうな笑みを浮かべると、両手を広げて語り出した。


「いやはや、ご苦労。我はこの街の領主である。

 この正義を語る暴力集団にはほとほと困り果てていたのだよ。」



 ……お前が領主かよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る