第62話 北の国へ

 あーあーあああああーあー


 ヅカさん達と東へ向かって出発しました。

 目的地は北の街ですが、森があるので海沿いに東に向かい、その後そのまま海沿いに北の街へ行くそうです。

 ちなみに孤児院の子供たちはもはや市場で敵なしになりました。

 教えてもいないジェッ〇〇トリームアタックとか使ってたのを見て、もう大丈夫だと確信しました。

 院長さんとエロハプはずっと結ばれないんだろうなと思いました。


 さて、なぜこんな小学生の作文みたいなモノローグになっているかと言うと、ずばり今の俺の状況が原因である。

 今、俺はヅカさんと移動中だ。

 ヅカさんと2人ではなく、護衛の人達が8人ほど周りを囲んでいる。

 前衛は前後左右に、後衛は斜め四方に騎乗した状態で配置され、全方位警戒中である。

 その真ん中にヅカさんの乗る馬車があるのだが、何故か俺が御者をしている横にヅカさんが座っているのだ。


 数日前に会ったばかりの胡散臭い旅人を隣に置くだけでも護衛からすると心配物だろう。

 今はそれに加え、眠ってしまったヅカさんが肩にもたれかかっているのである。


 男装が似合うヅカさんは決して可愛いとかキュートだとは言えないのかも知れない。

 しかし、地球の宝〇の男役を思い出して欲しい。

 美しいか美しくないかで言えば確実に美しい。

 今までの転移した世界では数々のハニートラップを袖にしてきた。

 しかし、裏の無い無防備な寝顔は多少なりとも俺の心を温めた。



 そして、それ以上に嫉妬の炎が燃え盛っていた。



 特に後ろで警戒役をしている武闘家らしき男。

 この世界の武闘家ってそんなプロレスのマスクマンみたいなの被ってたっけ?

 目の周りに炎が……おっと、なんだか嫌な予感がするな。

 これ以上は触れない事にしておこう。



 そんな感じで護衛の男たちはもちろん、なぜか後衛の女性にまで嫉妬の目で見られているのであった。


 ぼくはいやだな、とおもいました。


 ふと思い返してみれば、今までまともに嫉妬の目で見られた事は無い気がする。

 いつも異世界を全力で駆け抜けていた俺は、畏怖の目で見られる事の方が多かった。

 たまにはこんな目で見られるのも悪くは──

 いや、さすがに血涙を流しながら見られるのはあまり気分が良くないな。うん。


 そんな感じで次の街へと向かっていたのだが、何やら不穏な気配がある。

 全方位を警戒しているとは言っても、森の中に隠れている存在に気付くにはまだ遠いのだろう。

 反応からして隠れているのは魔物っぽい存在だ。

 有無を言わさず倒してしまっても構わないだろう。

 俺はサクッと光の槍を飛ばし、クマの魔物の頭を吹き飛ばすとそのまま進み続ける。

 なんかあのクマやけに禍々しいけど、この辺はあんなの多いのかな?


 急に魔法を放った俺に対して驚き構える護衛達。

 しかし、隣でヅカさんが眠ったままなのを見ると不満な顔を浮かべつつもそのまま進んでいく。


 嫉妬の目が畏怖の目に変わったのは、死体のそばに近づいたころ。

 そのクマの魔物が周囲で討伐対象だった、100人殺しのマーダーベアーだったと皆が気付いた時だった。

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