閑話12 たまにはゴリラも訓練を
孤児院の子供達に特訓を始めて3日目。
明日にはナキクへ向かって、ヅカさんご一行と出発する予定である。
子供達も基本はある程度抑え、後は反復練習や遊びの中でレベルアップしていくことだろう。
……ちょっとだけ食事に色々混ぜたし。
そんなスクスク育つ子供達を見ていると、自分も思いっきり体を動かしたくなった。
もちろん普通に全力を出すと世界がヤバい。
本気で木刀を振れば一瞬で折れる。
木刀の強度にもよるが、音速を超えたスピードに耐えきれず、構えた位置で木刀が折れて置き去りになる。
さらに手が生み出した衝撃波で、前方がズダズタに引き裂かれて谷が出来る。
ある程度の力で走ればクレーターを生み出す。
全力で走ろうとすると、ところてんのように世界のどこかに足形の出っ張りが出来るので、ある程度が限界だ。
もちろんそんな俺が特訓できる場所はこの世界に無い。
異世界転移の魔法で見つけた、無の世界があるのだ。
そこには地も天も空気も無く、いる間は無呼吸と身体保持の魔法を強いられるのだが、全力で訓練しても壊れるものが無い。
そんな異世界を見つけたのは地球に帰る時のうっかりが原因だが、今では大変重宝している。
思いっきり空気を吸うと、その世界へと転移するのだった。
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「おい!またブランクワールドに不良品が混ざってるぞ!」
「最近多くない?
何も設定してない、エネルギーだけの世界なのに何で壊れるんだろ?」
「エネルギーも抜けてしまってるし、何より何も無いはずの世界に様々な現象が起こった形跡があるんだけど。」
「作るときになんか異物でも混入したんじゃねえか?」
「異物ってなんだよ、ここは俺ら以外何も存在しないはずだろ?
それに、ブランクワールドを1つダメにする異物ってどんな邪神だよ。」
「邪神にも無理じゃないかしら。
本当に何も無い世界だし。」
「個人的にはブランクワールドにあったエネルギーがどこに消えたかが気になりますね。」
「破壊に使われて、残りはその辺に散らばっちまったんじゃねえのか?」
「そうね、ここで散らばったら薄まっておしまいだし。」
「そうですね、きっと考えすぎでしょう。
第一ブランクワールドで活動できる存在なんて僕たちくらいですし。」
「あのゴリラもそろそろそんな事出来るようになるかもしれないけどね。」
「「「「………まさか、ね?」」」」
「とりあえず使用頻度を下げませんか?」
「そ、そうだね。酷使しすぎたかもしれないし。」
「ひゃ、100年もすれば寿命が来るはずだしな。」
「どこかの世界で不老になってなければの話ですけど。」
「「「「………不安だ。」」」」
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