第61話 もうゴリなんてしないなんて

「言えないよ絶対!」


 子供達を見に来た訳だが、短時間でここまで進化しているとは思わなかった。

 昼ごはんを食べた後に散歩、夕方頃戻ってエロハプ対策会議。

 既に日は落ちているため、会議の前に魔法の明かりを用意していたのだが、それでも暗くて視認しにくい杭を飛び回るなんて半端じゃない。


 視認しにくい杭。

 だ、ダジャレじゃないよ?


 と、とにかくこれで院長が魚市場に行く必要が無くなりそうな訳なんだけど……

『子供達のスジがいいので、院長はもう訓練しなくていいです。』

 とか言えるわけ無いよ!


 晩ごはんも院長の手伝いをしてた子が完成させたみたいだし、とりあえずごはんごはん。

 お腹減ってるといいアイデア出ないもんね。



「子供達のスジがいいので、院長はもう訓練しなくていいです。」


 ストレートに言っちゃった!

 食後、お茶を飲みながらゆっくりと過ごしていた時に、いきなり爆弾発言を放り込んでみた。

 だってもう色々面倒くさくなっちゃったウホ。


「そ、そうなんですか……」


 落ち込んでる院長と、猿ぐつわを追加されてムームー言いながら飛び跳ねるエロハプ。

 とにかく後は子供達に体捌きを教えれば、あの混雑を上手くすり抜けて市場で買い物できるはず。

 買い物代行業やれば、子供達の収入にもなるかも。

 結果オーライ、全ては解決した!!



 ……ヅカさんの婚約者問題以外は。


「こうなったら吟遊詩人に頑張って貰おう。

 貴族の悲劇と悲恋を盛り込んで、ざまあ的人気とお涙頂戴的人気と恋愛話的人気のトリプルヒットを目指そう。」


「吟遊詩人って何をやる気なの?

 後半は言ってる事が良くわからないんだけど。」


 少し不安そうなヅカさんに、具体的な内容を伝える。

 少し長くなるからと、お茶を用意しながらさっきまで会議をしていた部屋へ戻る。


「今回の婚約破棄騒動だけど、多少美化した上で吟遊詩人に歌って貰う。」


「それ、私の恥をさらす事にならないか?」


 心配そうなヅカさんに、俺は説明を続ける。

 段々と脳筋度が下がってきた気がするけど、護衛の仕事に期待することにして我慢。


「あくまで俺の持論だけど、物語で人気が出る条件はいくつかある。

 悲劇、共感、成長、爽快感、好感の5つだ。

 悲劇でストレスを溜め、共感で増幅し、成長で希望を持たせ、解決したときの爽快感を楽しむ。

 ステキな登場人物がいるとなおさらいい。」


「……つまり今回の話をそれに当てはめると?」


 いきなり語り出した俺に、ちゃんと理解してついてくるヅカさん。

 院長は何とか理解しようとしているけど、エロハプにいたってはピチピチ跳ねてるだけだ。

 本格的に魚に見えてきた。


「つまり、今回の話をこんな風にまとめるんだ。」

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