第57話 話をしてよ!

 ドン引きしている様子の女?にめげずに話しかける。

 とにかくクジラの話を聞きたいんです!


「その一角ホエール?とやらの話を聞きたいんだ。

 どこの街なら食えるんだ?」


 食べる気満々の俺に、仲間が増えたと思ったのか女?は語り始める。


「この街より北に街を3つ超えると、ナキクという港町があるんだ。

 そこでは一角ホエールを捕まえて、肉は食べるし油は明かりやさび止めに、角は槍にも薬にもなるんだよ。」


 ヒゲが弦になったら完全にユニコーンの角の生えたクジラじゃないか!


「でも、生でも食べるんだろ?

 野蛮人の習慣じゃねえのか?」


 オッサンナイス補足!

 つまり刺身もあるんですねやったー!


「昔から生で食べると健康に育つって言い伝えがあるし、実際に生で食べるのが嫌いな人は病弱だったりするよ?」


「なるほど、野菜の代わりにビタミンを生肉でとってるのか……」


 地球でも寒くて野菜が育たない地方じゃ良くある習慣だったりする。

 カナダとかに生肉と発酵食品でビタミン不足を補ってたって話もある。


「びたみん?

 なんだそれ、健康に関係あんのかい?」


 聞き慣れない言葉に質問してくるオッサン。

 この世界には無い言葉だろうからしょうがないね。


「野菜には多く入ってるけど、熱に弱い栄養があるんだよ。

 肉食の動物とかは、草食動物が消化してる内臓を食べて取り込んでる栄養だね。

 野菜が少ない寒い地方だと、生肉とかで取ることも多いよ。」


 オッサンに説明すると、女?は俺に興味を持ったようだった。


「最初話しかけられた時は変な人だと思ったが、君は研究者か何かかい?

 知り合いの研究者もそんな感じだったのを思い出したよ。」


 それ、地球じゃ研究者肌とかオタク気質って言うんです。

 興味のあることには食いつくよね。しょうがないね。


「いや、各地の美味しい食べ物を探し歩いてる、ただの旅人だよ。」


「食べ物が目的の旅人って時点で変人じゃねえか!」


 うるさいオッサン、笑うなコンチクショウ!

 この世界じゃグルメツアーなんて変人のやる事ってわかってるよ!

 いつでも時代の最先端を走る人は変人扱いなんだ!


「と、とにかく情報ありがとう。

 近いうちに食べに行くよ。」


「そうか、しばらくしたら私もナキクに帰る。

 タイミングが合えば一緒に行こうじゃないか。

 変な旅するぐらいだから、護衛として期待できるんだろ?」


 道案内ゲット!

 簡単に人を信用しすぎな気がするけど、他にも護衛はいるんだろう。

 飛んだ方が速いけど、道中のグルメをスキップするのももったいないしね。


「しばらくはそこの孤児院で依頼受けてるから、連絡はそこにお願いするよ。」


「それならそこまで一緒に行こうか。

 よそ者だから場所を覚えないといけないからね。」


 こうして一緒に孤児院へと戻るのだった。

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