第47話 ガチ切れ
も う め ん ど く さ い
いやね、思い出したんですよ。
こう言うやり取りが面倒くさいから脳筋になろう、ゴリラになろうって思った事を。
でも結果がこんな風に毎回トラブルになるってことは、何かが間違っていたのでは無いかと。
今回だって職人ギルドのおばちゃん関連で既に夜だ、野宿も確定だろう。
そもそも、なぜ野宿しなきゃいけないのか。
目立たないようにしていたから舐められるんじゃないか?
弱そうに見えるから舐められるんじゃないか?
下手に出るから舐められるんじゃないか?
日本人としては最低限の礼儀として丁寧な対応してたけど、この世界じゃダメなのかも知れない。
それじゃあ、ちょっとだけ本気を出そう。
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それは夜も早い時間だった。
基本的に日の入りと共に休み、夜の明かりを節約する生活の人でも寝る前の時間。
大半の家庭が夕食を終え、寝る準備をしていた。
街全体を覆うプレッシャー
動けば殺されるんじゃないか
まるで水中…いや、油の中に浸かっているような
子供も動物も、泣き声どころか衣擦れの音もたてられない
そんな静かな夜に男の声が響き渡った。
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やっべ、ちょっとやり過ぎた?
まあいいか、多少恐れられるくらいでちょうど良い。
「私は神に準ずる力を持つ者なり。」
と、鳥肌が……
自分で言っててドン引きだけどしょうがない。
「旅人を装い、親切な兵士にこの街まで案内されてやって来た。
しかし、この街で職人ギルドと商人ギルドには不当な扱いを受けた。
神ならぬ身でやるにはおこがましいが、善人には祝福を。
悪人には報いを与えよう。」
駐屯地にいた兵士にはわずかな、案内してくれた兵士にはボチボチの加護を。
昔不老の方法を探していた頃に見つけた、限界突破の魔法を使う。
流石に距離があると弱くなるからちょうど良かったのかな?
この魔法は才能を引き上げるだけで、努力が必要だ。
でもあそこの人達ならちゃんと引き出してくれるだろう。
さて、問題は職人ギルドと目の前の商人ギルドの連中だ。
職人ギルドは1度落とし前を付けたんだけど、こうなってしまっては意味が無い。
この状況で、この街で商売もクソも無いだろう。
もう金儲けは諦めた。
次の街では力を見せつつ宝石でも換金しよう。
仕方ないので夜明けまでの12時間かけて燃える炎を両方のギルドの屋根に。
まるでロウソクのように燃えていくギルドの建物。
貴重品を持ち出す余裕を与えたのは、せめてもの情けという事にしよう。
なんだかしっくり来ない結末になってしまった。
善人とか悪人とか視点が違えば変わる物だし、俺らしくないなと自分でも思うんだけどね。
こうしてこの日、一晩中夜を照らしたギルドの炎。
直前の不思議な圧力と声から、両ギルドは悪だと非難された。
逆に祝福を与えられたとされ、実際に実力の向上が見られた兵士達は誇りとされた。
その両方の象徴として、一晩中ロウソクの炎を絶やさない祭りが行われるようになったとか。
後の世でロウソクの炎が魔道具の明かりに置き換えられても、『これはロウソクのホノオ』と繰り返しとなえられた。
そして夜の街にはウホウホと声が響き渡るのだった。
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