第43話 モンスター
誰かさんが職人ギルドを逃げ出したその頃。
そこからそう遠くない森の中で、とある黒ずくめの男が不気味にたたずんでいた。
「ここはこれで良いだろう。
次は……あっちか。」
薄暗い森の中に半径5mほどのひらけた場所があり、その中央に立つ男の足下には光り輝く魔方陣があった。
魔方陣の上にはエルフ、ドワーフ、獣人に人間の死体が血まみれで転がっている。
男の手には水晶の玉が暗い光を放っており、禍々しい瘴気を垂れ流していた。
男が水晶を魔方陣の真ん中に置くと、そのままその場を立ち去った。
その水晶が地面に沈むように沈んでいくと、代わりに浮かんできたのは醜いゴブリンだった。
ゴブリンが出て来ると体に付いた土も気にせず魔方陣の外に移動し、また中央から出て来る別のゴブリンをじっと見つめている。
それは次々と繰り返され、魔方陣の外をズラリと埋め尽くした後も続いていた。
魔方陣が見えなくなるまで外側に並んだ後は、最初に出て来たゴブリンから順に森の中へと向かっていった。
森の中で動物や他の魔物を殺すと、血も垂れるまま魔方陣の中に投げ込んでいく。
投げ込まれた死体はそのまま魔方陣の中に沈んでいき、また新たなゴブリンが魔方陣から浮かび上がって来る。
それは誰にも気付かれず、徐々に徐々にその数を増やしていった。
森の動物も他の魔物も狩りつくされ、森が死の森へと姿を変えた頃。
ひときわ強い光と共に、2回りは大きい頭が出て来ていた。
その個体は150cmほどの他のゴブリンに比べ頭2つほど大きく、250cmほどの巨体に丸太のような太さの手足。
鋭い眼光にゴブリンより鋭く多い牙、明らかに普通のゴブリンとは別格の存在。
埋まっていた水晶玉らしき物が心臓の位置にあり、もはやゴブリンだとは思えない異形の存在だった。
その異形が体を震わせると、頭や肘などから杭のような水晶が生えだした。
そして天に向かい叫び声を上げると、周囲に散らばっていたゴブリン達を集め、海の音のする方へと歩き出した。
残された森には既に動物の気配は無く、ただただ木々が生い茂るだけであった。
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