第41話 えあ!?

 連れ込まれた個室でおばちゃんと2人。

 すぐそばの壁に押し付けられると、おばちゃんは壁に手をついて急接近。


 ……何この壁ドン。


「あんた今自己修復って言ったかい!?」


 すごい迫力である。

 ちなみに言ったのは【自己修復】ではなく【自動修復】だ。

 自己修復は発動させると修復する魔法であり、自動修復は現状から少しでも傷ついた時点で勝手に修復する魔法である。


「自己修復のエンチャントはこの街じゃ犯罪だよ。やりたいならヨソに行きな!」


 近すぎるんですが。

 鼻と鼻が付きそうな距離で凄むのはやめてください。

 とりあえず危害を加えられるとは2つの意味で思っていないので、そのまま話を聞くことにしたわけだけど……


「わ、わかりました。自己修復はやりませんから、ちょ、ちょっと離れてくれませんか?」


 横から回り込むように脱出し、距離を取る。

 このまま近づかれたら精神的な危害を加えられそう。マジ危ない。


「自己修復は仕事が減っちゃうからですよね。買い替えも減っちゃうし。」


 折れない剣は売れるかもしれないが、1人1本あればそれで十分であり、新しく産まれた子の分以外は売れなくなる。

 必然的に武器屋は淘汰され、職人の技術も先細り消えて行ってしまうだろう。


 …自己修復をエンチャントした剣を一刀両断して何度も買わせる商売は普通の人には無理だからね。うん。


「わかってりゃいいんだよ。魔法ギルドに行ったとしてもそこだけは忘れんじゃないよ。」


「いやいや、魔道具作成もしたいんだけど。

 魔道具作成も魔法ギルドの管轄なのか?」


 やっと離れたおばちゃんは意外とたくましく、抵抗する気が無かったとは言えゴリラを引きずり込むだけはあるようだ。

 ようやく顔面の圧力から解放されたので、もう1つ気になった事を聞いてみる。


「魔道具ってなんなんだい?魔法エンチャントした道具じゃなくて?」


 おう、魔道具自体が無かったのか。

 それじゃあ最初の街で売ったあの魔道具酷い事になってなきゃいいけど。

 まあ関係ないね。もうあの国正面からは戻れないし。

 でもどうしよう、とりあえずエンチャントで出来る範囲でごまかそう。


「例えば木の棒の先に炎のエンチャントをかけて、魔力を通すと燃え出すたいまつとか。

 武器防具とは違うけど、あれば便利になるアイテムとかってこっちには無いんですかね?」


 情報を流すと先に作られてしまう危険はあるが、どうせそんなに難しい物じゃないから真似されるのは変わらないだろう。

 逆におばちゃんの反応から、どのレベルまでならやっても目立たないか判断できるかもしれない。



「え?あえ?炎のエンチャント?えあ!?属性!?」



 あ、これ既に手遅れなパターンだ。

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