第40話 オスの魔法使い
というわけで無事近くの街の中にいます。
さっきの駐屯地は軍事港だったって事なんだけど、この街の港は単純に漁業だけなのかそこまで大きくは無い。
この様子じゃ貿易船も来ないだろうし、本来の商人にグルメ情報を聞くという目的は達成出来ないかもしれない。
それじゃあ次の街を…と思うのだけど、連れてきてもらったオッサンズ兵士の優しさが胸に刺さってる訳で……
よし、ここで稼いでとっとと恩返ししてから旅立とう!
元は行商人設定だから不自然じゃないしね。うん。
この国では看板はちゃんと文字の看板のようで、絵もついてはいるけどおまけ程度だ。
とりあえず勧められた2つのギルドを探して歩いていると、職人ギルドと思われる建物を発見した。
看板にある[職人ギルド]の文字と、蔦のような縁取りに職人の本気が垣間見える。
両開きのドアは機材搬入のためだろうか、それを両手で押すとほぼ重さを感じない。
何このドア、まさに職人の本気ってやつを感じるんだけど。
なんか片手間で魔道具作って売りさばこうとしている俺が入っていいのだろうか。
魔道具の作成や製薬に関しては、必要だったからある程度の実力はあるつもりだ。
でもこんな加工精度や細工をこの文化レベルで実現するような職人とは何かが違う気がする。
「いらっしゃい。見ない顔だね、何のようだい?」
……質実剛健、華美な装飾はいりませんって事ですね。わかります。
考えていることが顔に出やすいのか、なんだか睨まれている気がするけど気にしない。
「流れの職人兼商人なんだけど、盗賊に襲われちゃって何も無いんだ。
なんか仕事無いかなと思って来たんだけど。」
「流れの職人ごときがやる仕事なんて無いよ。
うちの職人は皆腕っききなんだからね!」
ぐうの音も出ない程の正論である。
本来職人は一か所にとどまって修行するのが普通であり、流れの商人を兼ねた職人なんてものは身につかないままだと相場が決まっている。
だが、それはそれ、ゴリラはゴリラである。
「ここの看板見ればそれくらいわかるさ。
俺が得意なのは魔道具作成やエンチャントだから、他の職人と協力できるかなって思ってさ。」
「なんだあんた魔法使いか。魔法使いなら魔法ギルドに頼んでるから、そっちに行ったらどうだい?」
魔道具作成やエンチャントする人間を魔法使いとはちょっと乱暴な分類じゃないのだろうか。
と言うか実はこの世界に無い技術だったりしたらちょっとマズい気がする。
ここは情報収集を兼ねて少し話を聞いてみよう。
「ここじゃ魔法使いに色々頼んでるのか。
ちなみに何を頼んでるか聞いてもいいか?」
「そうだねぇ、大体は状態保存の魔法が多いけど、武器なんかの打ち直しとか調整するやつは属性付ける事が多いね。」
「なるほど、それじゃあ自動修復の魔法なんかも──」
いきなり胸倉を掴まれると、ギルドの奥へと引っ張られていくのだった。
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