第37話 天使のラージソードを

 俺に殴られた貴族っぽいのは、まだ曲がってなかった鉄格子にぶち当たると、それをそのまま引きちぎり通路の壁に激突した。


 あ、普通なら確実に死んでる威力だけど、おそらくは女神とやらにチートか何か貰っているのだろう。

 多少崩れた壁から出て来ると、回復魔法なのか光で傷を癒やしながらめげずに近づいてきたウホ。


「なぜ俺の命を狙うウホ。」


「クソが……

 俺は女神に反抗的な態度だったからか、他のヤツらに比べてチートがショボいんだよ!

 それを知恵と努力で他のヤツらに追いつき、そして権力を勝ち取ったんだ!

 お前みたいに凄いチートを貰ったヤツに何がわかる!」


 コイツこりずにまた言ったウホ。


「俺はもう異世界転移25回目ウホ。

 魔王も20回以上倒してるウホ。

 チートなんて貰ったことは無く、やったのは勉強と鍛錬とレベル上げウホ。

 レベルの限界も魔法と薬を使って自力で突破したウホ。

 体感時間で20年近く若いまま成長し続けた結果が今なんだウホ。

 お前みたいな努力した気分の甘ちゃんが俺をと呼ぶなウホ!」


 俺は貴族っぽいのの後に回り込み、ふたたび拳の連打で吹き飛ばす。

 今度は牢屋内の壁に直撃し、突き破ると外へと転がり出た。


 少し離れた場所に見えるのは領主の館だろうか。

 ちょうど良いとばかりに貴族っぽいのを蹴り飛ばすと、異空間倉庫から盗賊の武器を全て取り出した。


【金属精製】・【武器作成】・【武器強化】・【ロックオン】・【投てき】


 このスキルの流れ懐かしい気がするな。

 大小含めて200本近くあった全ての武器をまとめ、1つの大剣ラージソードとして作った。

 幅2m、長さ10mくらいはある大剣に持ち手は無い。

 かわりに天使のような姿の美女が、テーブルに肘をついて頬に手を添えているような感じに仕上げた。


 まるで女神とやらが制裁を下したように見えるように。


 先に蹴り飛ばされた貴族っぽいのを巻き込むように、領主の館の半分以上を消し飛ばすとともに地面に突き刺さった大剣ラージソード

 まるで天から降ってきたように見えた事だろう。


 片手片足を失いつつも、貴族っぽいのは回復魔法を使い続けていた。


「クソが!クソが!クソが!クソが!

 やっと盗賊を配備し終わったのに!

 宗教作って、行商加護の旗とか売って、少しでも女神信仰を、女神の力を、奪いたかっ――」


 容赦なく本気で蹴り飛ばし、しっかりとトドメをさした。


 ……だって復讐しつこそうだったウホ。

 ちゃんと巻き込まれ召喚の件も含めて、女神とやらには1度会いに行かなきゃいけないウホね。




 後日。

 ここの領主だった貴族が、天から降ってきた天使の大剣ラージソードに館と命を吹き飛ばされたと言う噂が広がった。

 そしてそれは、よりいっそうの女神信仰へと繋がっていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る