第36話 あるカトラスからの脱出
「ここに入ってろ。」
連れてこられたのは取調室のような場所……ですら無く、牢屋のような場所だった。
やっぱりこの街の領主とさっきの盗賊たちがグルだったパターンウホ?
これは抗議しないといけないウホ。
「なぜこんな所に入らないといけないウホ?」
「ウホ?
お前が持っていた
刻印が入っているのがその証拠、大人しく入れ。」
やっぱりあの武器を渡したのは失敗だったのか。
まあ無実の証明は不可能では無い。
「あれは途中で襲われた盗賊の物だ。
武器が壊れたからあれを使っていただけの事。
盗賊の死体もここにある。」
そう言いながら、異空間倉庫から死体を取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。
「ち、ちょっと待て!1度それを止めろ!!」
眉間に小さな穴の空いた死体が牢屋に積み重なっていく。
11人分しか出しておらず、まだこの9倍近い数がまだ異空間倉庫に入っているのだ。
「いいから牢屋に入ってろ!
その死体が盗賊の物とは限らないからな!」
奪われた武器と死体を持って来たら、盗賊退治をしたと思うのが普通なんじゃなかろうか。
まあいいだろう、大人しく従ってやろうじゃないか。
俺は鉄格子をのれんをくぐるように広げると、そこから中に入った。
もちろん鉄格子は曲がったままである。
呆然と口を開けたまま固まった兵士は、しばらくすると役割を思い出したかのように走って行った。
しばらくすると身なりの良い貴族っぽい兄ちゃんを連れて兵士が戻ってきた。
金糸で刺繍でもしているのか、きらびやかな赤いマントに、真っ白でヒダヒダの襟が付いたシャツ。
細身のパンツには豪華な剣を腰につけていた。
「お前があの
お前異世界の勇者だろ。」
「え、チガウヨ?」
貴族っぽい兄ちゃんがいきなり言ってきたが、俺は勇者では無い。
あの男の娘が勇者だからね。うん。
「しらばっくれても無駄だ。
お前もあの女神あたりからチートを貰ってるんだろう。
そうじゃないと、あの盗賊だらけの街道を1人でやって来るなんて事出来ないはずだ。」
お前もと来ましたか。
コイツは勇者の男の娘と同じく召喚されて来たのだろうか。
「俺はただ巻き込まれただけだ。
その女神とやらにも会ってない。」
あの男の娘は女神と会ったりしてたのだろうか。
確かに日本から来たばかりにしては強かったみたいだけど。
「勇者じゃないなら問題ないなっ!――」
貴族っぽいのが剣を抜くと、いきなり斬りかかってきた。
常人なら視認できないような速度の一撃で、殺す気満々である。
俺は指で剣をつまむと、そのまま剣をへし折った。
「クソが、やっぱりチート持ちじゃねーかよ。
まだ弱い内に大人しく死んどけや!」
柄の悪い言葉だが、そこじゃない。
コイツは俺の逆鱗に触れやがったウホ!
おそらくは異空間倉庫のような物から取り出したのであろう、今度は白銀の大剣で
俺はそれを上回る速度で回り込むと、拳を握り締めそっと脇腹に1発。
「これは!全部!自前で!鍛えたんだよ!」
そのままそう言いながら殺さない程度に連打した。
今回のを含めても25回召喚されているんだ、このステータスはチートなんて一切無い、鍛えに鍛え抜いた血と汗と涙の結晶なんだよ!!!
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