第34話 リアル鬼ボッコ

「だ、誰だ!いったいどこから来たんだ!?」

「そうだそうだ!今この村はゴブリンに囲まれてるんだぞ!」

「住民なら戦えるやつ以外みんな避難しているはずだ!」

「戦えるやつの中にこんな変なやついなかったぞ!」


 おい、誰だ今俺の事変人呼ばわりしたやつ。


 張りつめていた緊張感が緩んだのか、一斉に質問してくる村人たち。

 あれだけの数のゴブリンに囲まれていたら、普通の村人には耐えられなかったのかもしれない。


「そんな事よりゴブリン収穫しに行こうぜ!

 柵のとこにいた人達はもう収穫始めてるぞ?」



「「「……は?」」」



 うん、意味わからないよね。

 ゴブリン収穫とか日本語…じゃないけど日本語がおかしい。

 ポカンとアホ面を晒している村人たちに、とりあえず刃物を持って村の外へ集まるように促す。


 そこで何人か気づいたようだ。

 さっきまでグギャグギャと脅すように聞こえていたゴブリンの声が、聞こえる事に。

 おそらくは既にのだろう。


 村の外にたどり着くと、そこは一面のゴブリン畑になっていた。

 ほぼ全てのゴブリンが首から上だけを地面から出している状態で、わずかにいる手を出しているゴブリンも肘から先しか出ていない。

 魔法を使う個体は魔力で見分けて口元まで埋めてあり、そんな状況では流石に攻撃出来ないようだ。

 視界の180度以上に広がるゴブリンの頭。

 村を守っていた人達は既にゴブリンにトドメをさし、左耳と何やら小石のような物を取り出している。

 その後掘り出しては装備をはぎ取り、別の穴に投げ捨てていた。

 後でまとめて燃やすのかも知れない。



「ほら、ゴブリンから何が取れるのか知らないけど、絞めて収穫しなよ。」


 この世界でのゴブリンのポジションも知らないけど、村を襲っていたなら退治すると多少の金にはなるんじゃ無いだろうか。

 左耳と魔石っぽいものを集めてるみたいだし。


「こ……これは貴方がやったのですか!?」


 ボーッと口を開けていただけの村人の中で、1番復帰が早かった青年が質問してきた。

 コイツが村長やるのが1番なんじゃなかろうか。

 とっさの状況に早く対応できそうだし。


「ああ、まあ、魔法でちょちょいとね。うん。

 お金になるなら自由にして良いから、後始末は任せたよ!」


 そう言って颯爽と立ち去る俺カッコイイ!

 なんて思いながら次の街へと急ぐのだった。



 後日、ここでのゴブリン畑事件も首から下が埋まっている事から、チョビハゲ事件と同一犯と見られる事になった。

 しかし、圧倒的力を見せて山賊とアリを退治した男と、あり得ないレベルの魔法で首から下を埋める男は別人と認識される事になった。


 ここに、新たな犯罪者ヒーローの噂が広がっていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る