第33話 ノーフューチャー
戻ってきました分かれ道。
ジャンプしたらさっきの兵士に見つかりそうだから、魔法で人が沢山いるところを――
おい、なんでこんなにトラブル続くんだよ!
この先の村を魔物が包囲してるじゃないかコンチクショウ!
街道がえぐれない程度に加速し、村へと急いだ。
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「もう終わりだ!助かるわけがない!」
避難施設を兼ねた村の集会所は悲観と絶望に包まれていた。
年寄りは既に死を覚悟し、子供は泣き疲れてもう声も出ない。
中には抵抗しようとする若者もいるが、大半はもはや諦めていた。
街道沿いで魔物なんて滅多に出ないはずのこの村にそこまでの戦力はおらず、わずかながら存在していた戦える者は助けを呼ぶと突撃し、既に殺されている。
村の人口は500人程度。
戦えそうにない子供や年寄りを除くと、女を足しても300程度にしかならない。
それに対して周囲を囲む魔物はざっと見た限りでも3,000を超える数だ。
大半がゴブリンなのだが、数百ほど体格の大きいホブゴブリンもいるようだ。
見た目が変わらないだけでゴブリンマジシャンやゴブリンウォーリャーなども混じっている。
村人にはゴブリンを倒すので精一杯と言うのに、10倍どころか上位種も倒さねばならないのだ。
一点突破しようにも、広範囲に広がるホブゴブリンを抜けることは難しく、他のゴブリンに押しつぶされてしまうのが目に見えている。
それでも固まって包囲を抜けようとするなら数人は逃げられるのかもしれない。
他は全員死ぬ未来を、一致団結して強行出来るというのならば。
それはこの村の住人には出来るはずのない選択だったのだ。
「お前ら全員で突撃すれば、流石のホブゴブリンも1人や2人逃げる隙が出来るはずだ!
ここは村長であるワシが逃げるためにお前ら――ぐぉばっ!」
こんな状況でこんな指導者では生き残れるものも生き残れないだろう。
無力さに憤っていた若者達は、八つ当たり先を見つけたかのように村長を滅多打ちにしてしまう。
不安を紛らわせると言う意味もあったのだろう。
誰もそれを止めることは無かった。
村長がもはやピクリとも動かなくなった時、次に狙われるのは弱い女であり、命の危機においてモラルなどという物は簡単に吹き飛ぶ物である。
どうせ死ぬのならば。
そう思った男たちが襲いかかるのは時間の問題だったのだ――
「こんちゃーっす!」
そう、その男が場の空気を読まない明るさで集会所に入って来るまでは。
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