第31話 風と共に駆け抜ける
さあ出発だ!
白い建物が並ぶ大きな道を抜け、大きな鉄製の門をくぐり抜け――
……と思ったのに、何故か門で止められました。
どうやら貴族に無礼を働いた奴がいるとのこと。
頭を剃られ、変な髪型にされたらしい。
どう考えてもカイゼルハゲです。
あれ?チョビハゲに進化したんだったっけ?
こんな事もあろうかと、今の俺はたくましいムキムキのゴリラ顔のオッサンに変装している。
「ご苦労様ウホ。
早く見つかるといいウホね。」
「語尾にウホってつける奴だとの情報があるんだが…
体格も顔も違うようだしな……」
危ない危ない、ゴリラはマズかったか。
幻術だから触られるとマズいし、ここはそそくさと退散しよう。
一悶着あったけど、無事に通過しました。
しばらく街道沿いに進んで街が見えなくなった頃に幻術解除。
そのままスピードアップして街道を駆け出す。
右手に遠く森が見える。
その中には魔物もいるようだが、街道までは出て来ないようだ。
そう言えば街道沿いに並んでいる石柱から魔物よけっぽい魔力を感じる。
解析してみると、この世界での魔法の法則も見えてくる。
そのまま走り続けていると、平原から森の中に入ったところで前方から戦闘音が聞こえてきた。
森の中で平原から見えなくなったあたりで、盗賊あたりが待ち伏せしていたのかも知れない。
スピードを緩めずそのまま近づくと、20人ほどの盗賊に囲まれている豪華な馬車を見つけた。
護衛は5人ほどではあるが、それなりの実力なのか持ちこたえているようだ。
街道は幅5メートルほど、馬車がすれ違えるくらいのスペースを確保してあるのだろう。
しかし今は3本の丸太で道を塞がれ、丸太の奥には盗賊の弓兵が構えている。
横からも盗賊が回り込もうとしているが、護衛の魔法使いに牽制されているようだ。
護衛の弓兵は同じく盗賊の弓兵を牽制しており、タンクと思われる重装備の護衛と大剣を振り回す護衛が盗賊の前衛を抑えている。
回復役らしき女性はフレイルを振り回し、前衛を抜けてくるのを防いでいるようだ。
今は抑えているが、このままではジリ貧だろう。
体力が尽きてしまえば一気に押されてしまうだろうし、盗賊もそれを狙っているようで入れ替わり波状攻撃をする事で休ませないようにしている。
徐々に焦りだしたのか、大剣の護衛が大振りになってきた。
そこをジャンプで飛び越える俺。
道を塞いでいる丸太の前に着地すると、その丸太を片手でつかんで後に隠れていた弓兵をなぎ払った。
そのまま右側に回り込もうとしていた盗賊に丸太を投げつけると、残りの2本の丸太を左右の手でつかみ回転。
さっき飛び越えた盗賊の前衛を右手の丸太でなぎ払うと同時に、左の丸太を左側に回り込もうとしていた盗賊に投げつけた。
そのまま1回転して右手に持ったままだった丸太を縦回転で投げた。
右奥に隠れていた伝令らしき盗賊が跳ね上げられたのを横目に確認しつつ、俺はそのまま街道を走り続けた。
この間8秒。
あっけにとられていた護衛たちを置き去りに、次の街へと向かうのであった。
……え?
だって助けたお礼だ何だと同行を求められ、護衛替わりにされるに決まってるじゃん。
この盗賊が雇われた暗殺者で、馬車に乗ってたのが貴族の娘とかだったら確実に面倒くさい事に巻き込まれるじゃないですかヤダー。
俺は自由なんだー!!!
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