第29話 もうこんな時間
トラブルも円満に解決したので、部屋に戻ろうと──
え、円満ですよ?何言ってるのやだなー。
とにかく部屋に戻ろうとすると、誰かが結界を解除しようと頑張っていた。
そう言えばこの世界の魔法はまだ見ていない。
基本的にはどの世界も[魔素]だの[魔力]だの[マナ]だの[エーテル]だの不可思議な力を燃料に奇跡をおこすのが魔法である。
魔法だったり魔術だったり超能力だったり呼び方はそれぞれ違うし、やり方もそれぞれの世界で違うけど、大体似たようなものである。
例えて言うなら魔法は[魔素]的な札を使ったトランプゲームのような物である。
札に数字さえ書けば様々なトランプゲームをやる事が出来るが、そもそも数字が漢数字だったりギリシャ数字だったりするとババ抜きや神経衰弱と言った簡単なゲーム以外は出来なくなるような物である。
最初の数回は異世界転移してすぐは魔法が使えなかったが、今は【異世界言語】などの自動変換機能があるため覚えている魔法ならすぐにでも使用可能だ。
その異世界の言語で作られている結界を一生懸命解読しようとしているのは全身黒ずくめのいかにもな暗殺者スタイルの人物である。
罠解除の要領で結界を解こうとしているが、国語辞典を片手に英文を翻訳しようとしているような物であり、絶望的に無理な話だ。
結界解除に夢中になっているからか、俺が気配を完璧に消しているからか。
こちらに一切気付く様子の無い暗殺者的な人の後ろに回り込んでも完全に無反応である。
俺が満面の笑みで暗殺者的な人の肩に手を置くと体を跳ねさせ、とっさに距離を取ろうとするがビクともしない。
俺の握力はゴリラ以上だぜ!
ギギギギと音が聞こえそうな感じで振り向く暗殺者的な人。
満面の笑みを浮かべる俺。
もうこんな時間だからね。
毛根無い時間だよね。
そろそろハゲネタを自重しないと怒られる気がするので、とりあえず後ろに放り投げて部屋に戻ると寝ることにした。
え?尋問?背後関係の調査?
全部殴れば問題ないからね。めんどくさいしね。
いやあ、脳筋って楽だなぁ──
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「親方!空からおんなのこg──」
落下スピードそのままで地面にたたきつけられる黒ずくめのいかにも怪しい人。
少年は何も見なかったことにして、千鳥足で家に帰る親方のあとを追いかけた。
いかにも胡散臭い恰好の人を介抱したところで待っているのはトラブルだけであり、こういう時には関わらないのが長生きするコツだと少年は知っていた。
明日も親方に怒鳴られ、1日でも早く1人前になりあの娘を迎えに行く。
そんな少年に冒険はいらないのである。
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