第21話 女神はいつでも
「そこのお姉さん!ちょっとお茶しない?」
やっている事は完全にナンパである。
無理強いはしたくないので、強引には誘えないし噓を教えられても困る。
男に聞こうにも、ほとんどが仕事中のようで相手にしてくれない。
逃げるようにお尻を押さえて走って行ったやつは、無性に腹が立ったので足下に出っ張りを作って転ばせてやった。
……それにしても45連敗は心が折れる。
「そこのお嬢ちゃん、お兄さんとお話しない?」
「いいよー?お兄さん見ない顔だね?」
「そうか、ごめんね、またよろ……っていいの!?」
やけくそになって幼女に声をかけたところ、2つ返事でオッケーが出た。
今回も天使は幼女だった!
もうこれは幼女教でも立ち上げるべきだろうか!!
幼女は俺の腰くらいしかない身長で、深緑の髪を後ろで2つに結んでいた。
服装は綿っぽい布で出来た茶色のワンピースにベルト、上からワインレッドのベストを着ていた。
回りと比べて特に良くも悪くも無いようで、中流の家庭の子なのだろう。
洋服の色が全体的に暗めなのは、汚れが目立たないようになのだろうか。
他にも暗い色の人が多い事から、染料や街並みとの対比もあるのかもしれない。
俺は幼女に導かれるまま、謎の店に入った。
洞穴というか虫取り網の網だけというか……とにかくそんな絵の描いてある店だ。
中に入ってみると、カプセルホテルのような扉がたくさん並んでいた。
ここは宿屋なのだろうか、この世界はこれが普通の宿屋なのか?
カウンター横のスペースには2つほどテーブルがあり、ラウンジ的な役割になっているのだろう。
そこで幼女と向かい合って座る。
どう見ても怪しい男です。本当にありがとうございました。
「お父さん、お客さん候補連れてきたよ。お茶ちょうだい!」
どうやらここの娘だったようだ。
中からゴリゴリマッチョの角刈りが顔を出すと、そのまま奥に引っ込んでお茶を用意するようだ。
「それで何のお話するの?」
「うん、お兄ちゃんはよそから来たんだけど、この街の事を色々と教えて欲しいな。」
別に異世界から来た事を隠す必要はないんだけど、なんとなく伏せて話を進める。
貴族に目をつけられても殴ればいいからね。だから本当になんとなくだ。
お茶が目の前に置かれる頃にはそれなりの事を知ることが出来た。
お金には大銅貨50枚分の小半銀貨とやらもあるらしく、小銀貨を半分に割って使っているらしい。
大銅貨100枚とかジャラジャラとかさばるし重たいもんね。
先ほど武器屋かと思った剣と杖の絵は傭兵斡旋所で、ここは低~中級の傭兵がよく使う宿屋のようだった。
2階は普通の個室になっているが、2人以上の部屋になっているらしい。
他にもいろいろなお店の絵を教わった。
これでこの街で過ごすのに不自由はなくなった……と思う。
とりあえず旅の人間が仕事を得るのであれば傭兵斡旋所、もしくは両手を描いた人材斡旋所に登録するのがいいとの事。
ここの宿は1泊大銅貨2枚、個室だと6枚だという事なので、とりあえず3日分の個室を取り、小銀貨で支払った。
お釣りは小半銀貨1枚に大銅貨32枚。お釣り誤魔化されずに良かった。
根に持ってるね、うん。
この世界になれるまではゴリ成分が足りない気がするけどしょうがない。
破壊衝動があるわけじゃないからね。
とりあえず別に問題は無いらしいから、傭兵斡旋所と人材斡旋所両方に登録をしに行こう。
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