第4章 王道編

第18話 よくある話?

 24回目。

 このパターンは一番多いかもしれない。


 全体的に薄暗く、石造りの壁や天井。

 床には光り輝く魔法陣、目の前にはピンクの…ボディコン?

 え、カクテルドレスとかじゃないの?

 …なんかちょっと違う気がするけどとにかく金髪巻き髪のお姫様。


 そして横には女の子。

 ……女の子!?

 紺色のブレザーに白のブラウス、紺色のプリーツスカートに赤いリボンとか思いっきり日本の高校生でした。


「ようこそいらっしゃいました、勇者…さまがた?」


 あ、やっぱり巻き込まれたパターンだ。

 おそらくは俺1人のはずだったんだろう。

 きっとこの後適正チェックでもある流れじゃなかろうか。

 隣の女の子はいまだに事態を飲み込めないのか、呆然としたまま動く気配はない。


「と、とりあえずこの水晶でお二人の適性を確認したいと思います。」


 説明無しかよ。

 いや、とりあえずイレギュラーでお姫様も混乱しているのかもしれない。

 こんな時でも落ち着いている俺はきっと慣れすぎているからだ。

 ……いや、正直段々日本での生活に戻れない気がしてきたけど。


「とりあえず状況の説明を先にしてくれない?

 ほら、この子完全に混乱してるし、状況説明して落ち着いてからの方がいい気がするんだけど。」


 はいはい周囲の兵がちょっと怒るのもパターンパターン。

 でもここで下手に出ると厄介になるパターンが多いからね。仕方ないね。

 伊達に24回も召喚を繰り返してないぜ!……自慢できないな。


「あ、はい。そうしてもらえると助かります。」


 そう言いながら髪やスカートの裾を整える隣の子。

 隣の子。


 ……え?ほえ?!?


 マジか、さっきからなんかいつもと色々と違う気がするんだけど、こんな変化球いらなかったよ……

 逆に混乱し始めた俺をよそに、お姫様は状況の説明を始めた。


「ここはあなた方から見れば異世界になります。

 あなた方の足元にある魔法陣で、勇者の素質を持つ方を召喚させていただきました。

 選択の余地なく無理やり呼んだ事をはじめにお詫びいたします。」


 戸惑いながらも異世界召喚の説明を始めるお姫様。

 うんうん、俺にとっては良くある事だけど、呼ぶ方は初めてってパターンが多いもんね。

 そんな腹黒い感じじゃないから今回はいい方じゃなかろうか。

 丸坊主にする必要はなさそうだ。


「ただ、今回はどのようなミスがあったのか、お二方をお呼びしてしまいました。

 本来この魔法陣では勇者1人が呼び出されるはずだったのですが……」


 失敗したのではないかと不安になるお姫様。

 まあ古文書とかに載っていた通りにやったのに、違う結果が出てしまったのならそうなるのも仕方がない。

 とっとと適正とやらで彼女?彼?とにかく隣の男の娘が巻き込まれただけだと証明出来たら、自前の帰還魔法で送り返してあげよう。


「ひとまず先にどちらが呼び出された勇者なのか、この水晶で確認したいと思います。」


 お姫様が持つ金の台座には、紫色の小さな座布団のようなクッションを下に球状の水晶が鈍く輝いている。

 お姫様は水晶を男の娘の方に持っていくと、手を乗せるように促した。

 おずおずと手を乗せる男の娘。


 光り輝く水晶球。



 ステータス

 Lv:1

 職業:勇者

 属性:光・火・風・土・水・生命・雷・氷・樹

 筋力:50

 体力:45

 俊敏:38

 魔力:86

 精神力:92

 運:2,986

 スキル:【不死なる勇者】【英雄の光】【最善の状況】【成長速度3倍】【成長幅3倍】



 ……え?俺が勇者じゃないの?

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